デジタルの闇:米英企業が通信遮断と反体制家の身元割り出しでエジプト政府を支援

2011/2/1(Tue)
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エジプト革命の初期にソーシャルメディアが重要な役割を果たしたことは、政府がネットワークと通信の全面遮断という挙に出たことでいっそう際立ちました。ネット弾圧に手を貸したのは欧米の企業です。英国の通信事業者ボーダフォンのエジプト現地法人は、政府の命令に従い国内の電話とインターネットのサービスを遮断し、ボーイング社傘下の米国企業ナルス社は、反体制活動家の身元の割り出しに役立つネット監視技術をエジプトに売りました。ディープ・パケット・インスペクション(DPI)と呼ばれるこの技術は、イランでもサイバー活動家の弾圧に利用されました(WSJ記事英文)。売り込んだのはノキアとジーメンスの合弁企業です。中国政府も活動家の弾圧にこの技術を活用しています。
でもそれは、非民主的とされる国々だけに起きることではありません。米国でもブッシュ政権いらい"ずっと”行われています。ブッシュ大統領が行った「テロとの戦争」のための捜査令状なしの通信傍受は悪名高いのですが、それを痛烈に批判したはずのオバマも大統領就任後はころりと立場を逆転させました。(オバマの個人情報保護政策は歴代最悪:英文

フリー・プレスのティム・カーとニューヨーク市立大学教授C.W.アンダーソンに話を聞きます。カーは、エジプトで通信がどのように遮断されたかを説明し、“国家的脅威”の場合に米国で通信を遮断する根拠となりうる、上院に提出された法案「国家資産としてのサイバースペース防衛法」について論じます。アンダーソンは、2004年の共和党大会と民主党大会での抗議行動を起源とするツイッターの、社会運動ツールとしてのルーツをたどります。

日本では6月17日にコンピューター監視法案が参院を通過する見込みです(日弁連集会ビデオ)が、この立法の次のステップは懸案になっているサイバー犯罪条約の批准かもしれません。批准されれば国際監視ネットワークに組み込まれ、日本国内での捜査権限の拡大に利用されるのではないかと危惧されます。

ちなみに、日本でも大手プロバイダーはDPIを設置しているようですが、これをターゲット広告に利用することを総務省が容認するとの新聞報道が物議をかもしたことがあります。 商売のためにプライバシーを侵害されてはたまりませんが、こんな安易な発想で情報をためこもうとするようでは捜査への協力を当局から要請されたら二つ返事で出しちゃうでしょう。(中野)

★ ニュースレター第45号(2011.10.31)

*ティム・カー(Tim Karr)フリープレスの広報主任
*CWアンダーソン(C.W. Anderson)NY市立大学のコミュニケーション学 助教

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字幕翻訳:田中泉 校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子 サイト作成:丸山紀一朗