イルカを殺すな! オスカー受賞映画「ザ・コーヴ」

2010/8/16(Mon)
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18分
この夏、日本での上映中止を求める抗議行動が続いて話題になった、オスカー受賞作品「ザ・コーヴ」。和歌山県の太地町で行われている伝統的なイルカ追い込み漁をセンセーショナルに取り上げ、国辱映画だとして一部の人々の反感を買いました。さいわい、表現の自由を擁護する発言も多く出され、無事に上映にこぎつけました。どんなに内容に問題があるにせよ、発表そのものを妨げてはいけませんが、無許可の撮影をはじめとしてドキュメンタリー映画制作の手法については問題がいろいろ指摘されています。

それについては、日本語のサイトにたっぷり情報があります。ここでは、この映画を作った人々が、どのような背景を持ち、どのような意図を持って、こうした作品をつくったのか、本人たちの声を聞いてみましょう。 さて,あなたはどのような判断をされますか?

映画が作られるきっかけとなったのは、イルカを捕獲して人工の水槽に囲い、人間の楽しみのために芸をさせることは、間違った愛情の注ぎ方だという、元イルカ調教師リック・オバリーの訴えです。60年代にはテレビ番組「わんぱくフリッパー」の調教師として活躍し、何頭ものイルカを飼育していましたが、キャシーと名付けられたイルカが囚われの環境に耐え切れなくなって"自殺"したのを契機に、イルカ解放活動家になったと語ります。イルカを友として愛し、人工飼育をやめさせるために世界を駆けめぐって活動してきたオバリーにとって、日本のイルカ漁は驚愕の「大量虐殺」以外のなにものでもなかったようです。

オバリーに感化されて映画を作ることを思い立ったルイ・シホヨス監督は、元々はジャーナリストであり、映画製作の短期集中コースを受けて初めて作った映画がコーヴでした。「イルカ漁は自然に対する犯罪であるばかりか、人道に反する罪である」と断罪するシホヨスは、映画制作にあたって、ジャーナリストとしての客観的な立場はふり捨て、活動家になったと公言してはばかりません。従来のドキュメンタリーのように、淡々と事実を追う退屈な作品ではなく、劇映画に近い面白さを狙った作品に仕上げたことが成功の秘訣だったと誇らしげです。盗撮や計略はすべて、この問題に人々の関心を引きつけ、これまであまり知られなかったイルカ漁の是非を問うという目的のためだということのようです。 

この映画が日本で上映され、イルカ漁の実態を日本の人々が知れば、きっと国内から批判が沸き起こると二人は期待しています。消費者のイルカ・鯨肉ボイコット運によってイルカ漁を根絶に導くことができると期待しているようですが、果たして実際にはそんなふうに動くものでしょうか。(中野)
ルイ・シホヨス(Louie Psihoyos)アカデミー賞受賞映画「ザ・コーブ」( The Cove )の監督

リック・オバリー(Ric O'Barry) イルカ愛護活動家
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字幕翻訳:中村達人/校正:大竹秀子 全体構成:中野真紀子