本物のクライメットゲート:自然保護団体が最大汚染企業と結託

2010/3/9(Tue)
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主要環境保護団体のいくつかが、身内から告発されています。地球を守るという使命を標榜しながら、その使命を裏切る不道徳な姿勢をとっているという非難です。英国人ジャーナリストのヨハン・ハリは、次のように記しています。「人類史上最大の環境危機に直面して、その危機の回避に率先して取り組むはずの主要環境団体の多くが、世界一の環境汚染企業からせっせと活動資金をかき集め、その見返りに科学的根拠に基づいた環境保護の主張を葬り去 ろうとしている。温暖化懐疑論者たちが大げさに吹聴するでっち上げの気候問題スキャンダルよりも、こちらこそが本物のクライメットゲート (気候データ改竄疑惑)だ」。

告発されているのは、コンザベーション・インターナショナル(CI)やTNCやシエラクラブなどです。こういう団体は、一般市民の声を代表して立派な目的を追求する市民運動のように思われていますが、その実は営利企業とあまり変わらない運営方式の団体です。コンザベーション・インターナショナル(CI)の元職員の告発によれば、代表は社長とかCEOとか呼ばれ、トップ1%に入るほどの高額所得者です。彼らの仕事の大半は、企業トップや映画スターを自家用ジェットやヨットで世界の美しい自然に案内し、接待によって寄付金を集めることです。献金団体には石油会社をはじめとする汚染企業が名を連ねており、そうした企業におもねって本当の対策に必要なものから大きく後退し、生ぬるい批判でお茶を濁す姿は、まるで汚染企業の広報出張所のようです。

これらの団体が掲げる低すぎる目標設定は、むしろ環境破壊を促進し、破滅への道に向かわせるものだとハリは言います。気候学者によれば、たとえ気温上昇を2℃未満に抑えても温暖化による破滅を防げる確率は半分ですが、そのためには2020年までに温室効果ガスを40%削減する必要があります。でも、これらの団体はそうした気候科学データを支持せず、40%の削減を要求するのは政治的な現実に合わないとして退け、米国政府の提出するわずか3%の削減提案に拍手を送りました。

また、温暖化対策推進の妙案として導入された、異論の多いキャップ・アンド・トレード方式のCO2排出権取引にも、これらの団体は深く関わっています。例えば米国の環境団体ネイチャー・コンサバンシーがボリビアで始めた森林保護プロジェクトは、BPやパシフィコープなどの汚染企業が資金を出したもので、「ボリビアの熱帯雨林伐採を阻止することによって5千万トンのCO2放出を防ぐ」見返りに、別の地域で同量のCO2を排出する権利を手に入れるという仕組みですが、実際には伐採地を移動させるだけで地球全体の伐採量を減らすわけではなく、CO2排出の削減を遅らせる効果を持つと言われます。

地球温暖化の科学的根拠をめぐる虚実の入り乱れた報道を判断するには、情報提供者の資金がどこから出ているのかを参考にするのが一番かもしれません。なお、いわゆるクライメットゲート疑惑については、騒ぐだけ騒いでおいて、最終的に「不正の事実はなかった」という公式の調査結果が出たことを報じない日本の報道のあり方も少し無責任かも。(中野)

企業からの寄付を受けている団体
コンサーベーション・インターナショナル Conservation International (CI)
野生動物保護協会Wildlife Conservation Society
世界自然保護基金 World Wildlife Fund
ザネイチャー・コンサーバンシー(TNC)the Nature Conservancy
シエラクラブ Sierra Club

企業からの寄付を受けていない団体
グリーンピース(Greenpeace)
350.org.
フレンズ・オブ・ジ・アース(Friends of the Earth)

 

*ヨハン・ハリ(Johann Hari) 英国の新聞『インディペンデント』のコラムニスト。ネイション誌に「間違った環境派」という記事を書いた ‘The Wrong Kind of Green’ *クリスティン・マクドナルド(Christine MacDonald) 元コンサベーション・インターナショナル(CI)職員でジャーナリスト。著書は、CIの不正を告発したGreen, Inc.: An Environmental Insider Reveals How a Good Cause Has Gone Bad.
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字幕翻訳:関房江/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子・付天斉