イスラエルに対するボイコットは有効か?

2010/3/4(Thu)
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23分

ガザ支援船団を公海上で襲撃し、非武装の民間人を殺傷したうえ拉致監禁するという狼藉ぶりで、米国以外からは非難轟々のイスラエル。最近は頼みの親分の威信低下のせいか宣伝工作もうまくいかず、さすがに分が悪いと見たのか「ガザ封鎖を緩和する」と表明して国際世論に屈するふりをしてみせました。もちろん口だけです。でも、これでほっとした政府も多いでしょう。いまや米国への隷属を強めている日本の外務省はもちろんのこと、真相究明調査団の派遣を決議した国連人権委員会の投票を見れば、イタリアとオランダが米国と共に反対し、日本、英仏、韓国など9カ国が棄権しています。民間でこれだけ非難が盛り上がっても、政府レベルの対応は所詮こんなものです。

イスラエルの非道を止めることができるのは外交や軍事ではなく、市民による非暴力の国際運動でしかないと、ますますはっきりしてきたようです。ガザ支援船救援コンボイなどに加えて近年勢いを増してきたのがイスラエルに対するボイコット運動です。

2005年パレスチナの市民社会を代表する諸団体が創始したBDS運動は、イスラエルに国際法を順守させるためのボイコット(Boycott)、投資撤退(Divest)、制裁(Sanction)を世界の人々に呼びかける非暴力国際キャンペーンです。かつて南アフリカのアパルトヘイト政策廃止を求めて大々的に行われた国際ボイコットと投資撤退の運動からヒントを得たものでした。いまやヨーロッパを中心に世界的な広がりを見せはじめています。

でも米国では、ボイコットの有効性をめぐってイスラエルを批判する人々の間でも意見が割れています。チョムスキーのような辛らつな批評家でさえ、イスラエルに対するボイコットには懐疑的です。ボイコットは本当に有効な戦術なのか?BDS運動の創始者の一人で、パレスチナ出身の政治評論家、人権活動家のオマル・バルグーティと、米国シャローム・センターの創設者で、反戦・公民権運動に長年かかわってきたアーサー・ワースコウ師の討論をお届けします。(中野)

☆日本でのイスラエル・ボイコットの動きはまだまだこれからですが、もし働きかけができるとすれば、当面もっとも効果的と思われるものが、イスラエルへの進出を予定している「無印良品」ブランドの良品計画への働きかけです。同社のホームページによれば

■出店理由 イスラエルは面積2.2万km²(四国程度)人口約700万人と小国ではありますが、ハイテク、再生可能エネルギー、化学・医薬品産業での成長が著しい国です。2006年現在、1,378億US$だったGDP(19,900US$/人出典:外務省HP)は、2008年秋以降の世界経済不況の影響下でもわずかながら成長しており、2010年は復調の兆しが見えることからも出店の価値は十分あると判断しました。同国への日系小売企業の出店は初となります。
■1号店および今後の展開
2011年中にテルアビブまたはエルサレムに1店舗を出店予定。その後は未定   店舗面積:400m²前後 品揃展開: 衣服・雑貨、生活雑貨 約3,000アイテム

また文化面でのボイコットも有効です。例えば昨年、ガザ攻撃の直後にエルサレム賞を受賞した村上春樹氏に対して再考をうながす要望が届けられ、結果的には受賞したものの、その決断にいたる経緯を雑誌に発表するなど一定の効果があったようです。イスラエルの文化戦略をかんがえれば、学術交流や文化交流におけるボイコットを訴えることも重要でしょう。

オマル・バルグーティ(Omar Barghouti)パレスチナ人の人権活動家、評論家。イスラエルに対する国際ボイコット、投資撤退、制裁を呼びかけるBDSキャンペーンの創始者の一人。

アーサー・ワスコウ(Rabbi Arthur Waskow)反戦運動や公民権運動に長年活躍してきた米国の活

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字幕翻訳:桜井まり子/校正・全体監修:中野真紀子・高田絵里