ブラックウォーターのパキスタン秘密戦争 民間会社の暗殺・拉致計画への参与

2009/11/24(Tue)
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19分

民間軍事請負会社Xe(旧称ブラックウォーター)が、タリバンやアルカイダと疑われる人物の暗殺や拉致など、パキスタン領内で米軍やCIAの秘密作戦の一端を担っていると、ジェレミー・スケイヒル記者がスクープしました。パキスタン国内で多数の死者を出している米軍無人機による爆撃にも、ブラックウォーターが関与している模様です。この計画は独立性が極めて高く、オバマ政権のトップや軍当局者さえも存在に気付いていない可能性があるといいます。ネイション誌に記事が発表された後、初のテレビ・インタビューをご覧下さい。

パキスタンでの無人機爆撃は、米国のマスコミでは単にCIAの作戦として報道されていますが、実はCIAと並行して米軍の統合特殊作戦軍(JSOC)も無人機攻撃を行っているようです。

JSOCはアメリカ特殊作戦軍(USSOCOM)の一部門で、デルタフォースやネイビーシールズの一部をかかえるテロ対策専門部隊。ブッシュ=チェイニー政権の時代に大統領直属となり、通常の米軍の指揮系統から外れてしまったブラックボックスです。CIAには米国議会に対する報告の義務がありますが、JSOCにそんな義務はありません。報告義務がないのですから、犠牲者の数など気になりません。パキスタンでの民間人を巻き添えにした無人機爆撃は、そのほとんどがJSOCの作戦だとスケイヒルは言います。

パキスタンやアフガニスタンのCIAの秘密基地でブラックウォーター職員が働いていることは、NYタイムズなどでも報道されていますが、CIAだけでなくJSOCもブラックウォーターの要員に大きく頼っているのが実情のようです。これを通じて、ブラックウォーター職員は高レベルの機密情報にアクセスすることが一時的に許可されますが、JSOCの情報は米国の議員や政府高官さえ把握していないのです。

さらにはパキスタン政府さえも、ブラックウォーターを使っているというのですから驚きです。ただし直接の契約関係はなく、あいだに現地企業を挟んだ下請けの形をとっているのだそうです。パキスタン側もしたたかです。パキスタン政府と米国政府のあいだには、密約が成立しており、CIAがテロリストを追跡してパキスタン領内に侵入することをパキスタン政府は暗黙に了承していますが、それでも表向きには米国を非難することができるとスケイヒルは言います(中野)。

ジェレミー・スケイヒル (Jeremy Scahill) 独立ジャーナリストで、デモクラシー・ナウ!の特派員。『ブラックウォーター 世界最強の傭兵軍の勃興』 の著者。問題の記事は、ネイション誌2009年11月23日“Blackwater’s Secret War in Pakistan.” (ブラックウォーターのパキスタンでの秘密戦争)"Blackwater's Secret War in Pakistan" (The Nation)

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字幕翻訳:田中泉 / 校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子・高田絵里