ハミッド・ダバシ イラン選挙不正への抗議は「革命ではなく公民権の運動」

2009/6/24(Wed)
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イランでは6月12日の大統領選後に選挙不正の疑惑から大衆的な抗議行動が広まり、10日で少なくとも19人の抗議参加者が政府側の弾圧で死亡しました。ジャーナリストや活動家たちの逮捕・拘束が続いており、デモ参加者を裁くための特別法廷も設置されました。米国ではこれを、改革派による体制転覆をめざす運動ととらえたがる向きもあったようですが、実際にはそのような方向には発展せず、政府の弾圧によって2週間後には急速に勢いを失っていきました。あの動きはなんだったのか?

ニューヨークのコロンビア大学でイラン研究と比較文学を教えるハミッド・ダバシ教授の見方を紹介します。教授は「私たちがいま目にしているものは、体制転覆運動というよりは公民権運動だ」と言います。イスラム革命を担った世代をとらえていた、第三世界社会主義、反植民地主義、闘争的イスラム主義というイデオロギーに基づく闘争の時代は過ぎ去り、現在のイラン国民の大半は現在の体制の枠内で憲法が保障する市民の権利を守ることを求めているのだと。(中野)

★ ニュースレター第25号(2010.2.10)

ハミッド・ダバシ(Hamid Dabashi)
コロンビア大学のイラン研究・比較文学教授。イランの近代史を「伝統」と「近代性」の対立として捉える欧米の固定的な見方を植民地主義の道具として排し、まったく異なるイランの姿を提示した好著『イラン 背反する民の歴史』をはじめ、多数の著書がある。

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字幕翻訳:さかまきさきえ/校正:田中泉
全体監修:中野真紀子・付天斉