トーマス・ゲーガン 無制限の高金利が米経済を破壊してきた

2009/3/24(Tue)
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オバマ政権は3月に金融システム回復のため、1兆ドル規模の不良資産買い取り計画を発表しました。以降、金融危機は落ち着きを見せています。しかし私たちは、危機以前と同じ金融システムに戻るべきなのでしょうか?

米国ではカードローンやペイデイローンなどを通じて、長期金利が20-30%、短期金利は200-300%というすさまじい高金利が可能になりました。金融業のこのような高利率に比べて製造業への投資は5%程度の利益率がせいぜいです。このように毅然と利益率に差があれば、投資家は製造業への投資をやめて金融に投資するようになります。それどころか、製造業の企業までもが金融事業に手をだすようになり、米国の代表的な製造業であった自動車産業も、その実態はローン子会社が利益を牽引する大手金融業者なのです。

消費者資本が実体経済から金融セクターへとなだれをうって流出し、人々からカネを吸い上げる寄生的な金融経済が登場したと、シカゴの法律家トーマ ス・ゲーガンは言います。

「わたしたちは人間社会の最古の法の1つをご破算にした。それは高利貸しを抑制する法律だ。ハムラビ法典の時代からジミー・カーター大統領の任期が終わるまで、どんな文明にも何らかの形で存在した人間社会の掟だった」。

この大きな変化に比べれば、1990年代からの金融規制の緩和の影響など限られたものだとゲーガンは言います。この前代未聞の金融経済は、庶民の生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。(中野)

トーマス・ゲーガン(Thomas Geoghegan) シカゴを本拠とする法律家。See You in Court: How the Right Made America a Lawsuit Nation(『法廷で会いましょう 右派が米国を訴訟王国にした』) など、多くの著書がある。最近、ハーパーズ誌に「無限の借金 無制限の高金利が、いかに米経済を破壊してきたか」という論文を載せた。

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字幕翻訳:中村達人
校正・全体監修:中野真紀子・高田絵里