ホワイトハウスのベテラン記者へレン・トーマスが語るブッシュ政権

2009/1/13(Tue)
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ブッシュ大統領の最後の記者会見は、ホワイトハウス担当記者団との和気あいあいの雰囲気のなかで終了しました。質問の機会を与えられなかった最古参のヘレン・トーマス記者が切り込んでいれば、そんな馴れ合い的な雰囲気では収まらなかったかもしれません。ケネディ以降の9人の大統領すべてに質問してきた「報道界のファーストレディ」による鋭い質問を敬遠して、ジョージ・W・ブッシュは歴代大統領の慣行を破って長いあいだ彼女に質問の機会を与えませんでした。

ブッシュ政権7年目にしてようやく質問の機会を与えられ、トーマス記者は「この戦争を始めた大統領ですから、終わらせることもできまね。今すぐ国連平和維持軍を入れ、米軍を撤退させてはいかがです?イラクでは200万人が国を逃れて難民となり、国内避難民も200万人を超えています。イラクにアルカイダが勢力を広げたのは、あなたが戦争を始めたおかげですよね?」と聞きました。

馴れ合いの質問しかできず、結果的に大統領府の言い分をたれ流す道具になってしまうホワイトハウス記者たちの中で、ただひとり権力者の責任を厳しく追及することを恐れず、気骨のある態度を崩さないトーマス記者。その勇気と信念はどこから来ているのでしょう?

ヒントの一つは、彼女がレバノン出身の良心を持つアラブ系米国人であることかもしれません。米国の中東報道に正義を求めようとする者には、真実を語る勇気を持つことが、ときにはどんなに困難なことか、よくわかるはずだからです。

ブッシュ大統領から疎まれて不遇の時期が続きましたが、いま去り行くのは大統領の方で、報道業界のファーストレディは健在です。さっそくオバマ新大統領にも、「中東の核保有国はどこか?」と鋭い質問をあびせました。(中野)

ヘレン・トーマス(Helen Thomas)UPIのホワイトハウス特派員を60年近くつとめ、ケネディ以来のすべての大統領をカバーしてきた。ホワイトハウス付き記者たちの中では最古参であり、しばしば「報道界のファーストレディ」と称される。現在はハースト紙のコラムニストをつとめる。

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字幕翻訳:田中泉/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子・高田絵里