世界的食糧危機の中 G8サミットは豪華ディナーを楽しむ

2008/7/9(Wed)
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世界の食糧高騰と供給不足に「深く憂慮している」と言ったその舌も乾かぬうちに、北海道サミットに集った各国首脳は18品目の豪華コース料理を楽しみました。世銀の推定では食糧高騰により新たに1億人強が貧困ラインを割る可能性があり、30カ国以上で暴動が起きたなかでの美食の饗宴には、世界の現実がグロテスクに示されています。『小さな惑星の緑の食卓』の著者フランシス・ムア・ラッペとともに世界の食糧危機、食糧の自立、真の民主制度とは何かを考えましょう。

ラッペによれば、現在の食糧危機の原因は、食糧の不足ではありません。食物を分かちあう人類の本能を、強者が勝ち残るという市場ルールを唯一のドグマとする経済イデオロギーが打ち負かしてしまった結果です。自由市場万能の経済体制が、経済における権力の集中を可能にしています。地上にはすべての人を養うだけの食糧があるのに、人間が欠乏をつくりだしているのです。

国際金融機関が推進する自由貿易政策は、援助を与える条件として半強制的に途上国から食糧の自立を奪いました。国際市場で高く売れる作物に転換し、必要な食糧は輸入せよと奨励されたのです。その結果が現在の惨状です。自分の生存に必要なものが他人の支配下にあるような状況では、本当に自由といえるでしょうか?小農民の国際連合ビア・カンペシーノ(「農民の道」)が訴える「食糧主権」とは、このような考え方に基づいている、とラッペは言います。

洞爺湖サミットでは、遺伝子組み換え種子の導入など、生産性の向上ばかりが論じられましたが、根本原因は食糧の不足ではないので、増産では問題は解決しません。貧困ライン上にいる何億人もの人々は、生産量がいくら増えても食べ物が買えません。格差是正の議論を抜きにした食糧危機対策は欺瞞でしかないでしょう。(中野)

★ DVD 2008年度 第4巻 「食の危機」に収録

*フランシス・ムア・ラッペ(Frances Moore Lappé) 食糧開発政策研究所(フードファースト)、「センター・フォア・リビング・デモクラシー」、スモールプラネット研究所などの共同設立者。共著を含め16冊の著作がある。1971年刊行の『小さな惑星の緑の食卓』は100万部を超えるベストセラーになった。

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字幕翻訳:田中恵子 / 校正:永井愛弓
全体監修:中野真紀子・高田絵里