先住民作家ルイーズ・アードリックの独立系書店

2008/6/6(Fri)
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アメリカ先住民系の作家ルイーズ・アードリックは、第一作の『ラブ・メディシン』で全米書評家連盟賞を受賞して以来、数多くの小説を出版し、いま米国でもっとも注目される作家の一人です。

ミネアポリスで家族と一緒に経営している小さな独立書店バーチバーク・ブックスは、先住民社会を活性化する知的活動の場を提供し、集会場や展示場、サロンの役割もそなえたユニークな書店です。

新作『ハトの災い』は、1897年に起こった先住民リンチ事件に基づいています。「描きたかったのは正義の欠如を受け入れてしまった社会です。裁きは下されず、仕返しだけが何世代も続く。でも時代が下るにつれ、やがて人々は混じり合い、加害者と被害者の両方の血を引く者が出てきます」。ルイーズ自身がオジブワ系先住民の母と白人の父を持つ混血なのです。

異文化混合の家庭で育ったアードリックは、さまざまな文化の混合こそが現在の米国の姿なのだと言います。「オバマ議員は混血です。じつは誰でもそうなのです。米国ではいろんな血が混ざり合い、新人種が生まれています。異文化の融合が家族の食卓で起こっている、そんな家庭背景が育む視点をオバマ氏が備えていることは好ましい」と、むしろ雑種性こそを称えるべきだという今日的な価値観を提唱しています。(中野)

*ルイーズ・アードリック(Louise Erdrich) 小説家、詩人。全米書評家連盟賞を受賞した第一作『ラブ・メディシン』(望月佳重子訳、筑摩書房)から最新作のThe Plague of Doves(『ハトの災い』)まで、12冊の小説がある。現代米国で最も著名な先住民作家。

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字幕翻訳:中野真紀子