農業関連大手モンサント社の恐怖の収穫
「世界的な食糧危機の今、買いだめするなら米よりモンサント株がお勧め」――何百万人もが飢餓に追い込まれる中、一部のアグリ企業は過去最高益をあげています。その筆頭がモンサント社、世界最大の種苗企業です。同社の遺伝子組み換え作物は、米国の食品チェーンにあふれており、次は乳製品を狙っています。あれ、モンサントって化学企業じゃなかったの? いえいえ、いつのまにかアグリビジネスに変身しているのです。しかし他人の迷惑をかえりみない強引で攻撃的な企業体質は、ダイオキシンやPCBを作り出した頃から変わっていないようです。バニティー・フェア誌の寄稿編集者ジェームズ・スティールに話を聞きます。
モンサントは遺伝子組み換え種子の特許権を守るため、農家が種子を自家採取して保存することを禁じています。それを徹底させるため大勢の調査員を雇い、農家の栽培記録を開示させ、農場をカメラで監視し、違反の疑いを持てば有無を言わさず訴訟をちらつかせて農民を脅迫しています。
また近年は乳牛用の人工ホルモンも開発しています。人工ホルモンを使いたくない農家は、消費者向けに「成長ホルモン不使用」のラベルを表示していますが、モンサントはそれをやめさせようと政治的に働きかけています。根拠も無く「不使用」を表示することは、いらざる不安を掻き立て、安全や品質に違いがあるかのような誤解を招くとの主張ですが、消費者の知る権利は無視されているようです。
このような強引なやり方が気になるのは、同社に毒物汚染の前科があるからです。化学会社だった頃、ウエストバージニア州で製造していた除草剤は、副産物として恐るべき毒性の汚染物質ダイオキシンを発生させました。ダイオキシンはベトナム戦争で使われた枯葉剤エージェント・オレンジにも含まれていて、新生児の奇形が多発しました。またアラバマ州では電気機器の絶縁用ポリ塩化ビフェニール(PCB)を生産し、PCB汚染で周辺住民の健康を著しく損ないました。すさまじい汚染を引き起こした過去を忘れるわけにはいきません。(中野)
★ DVD 2008年度 第4巻 「食の危機」に収録
ジェームズ・スティール(James Steele) 調査報道記者、ヴァニティ・フェア誌の 寄稿編集者。 Monsanto’s Harvest of Fear(「モンサント社の恐怖の収穫」)を共同で発表した。
字幕翻訳:桜井まり子 / 校正:永井愛弓
全体監修:中野真紀子・高田絵里