「闇」へ 「対テロ戦争」の下の米国の虐待 後編

2008/2/12(Tue)
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4分

ドキュメンタリー映画作家アレックス・ギブニーの新作Taxi to the Dark Side(邦題=「"闇"へ」)はアカデミー賞のドキュメンタリー部門を受賞しました。デモクラシー・ナウ!では、アカデミー賞候補に選ばれた段階でギブニー監督をスタジオに招き、この作品についての思いを聞きました。

映画はアフガニスタンで起こった現地のタクシー運転手の失踪と死亡を手がかりに、ブッシュ政権が「対テロ戦争」の名のもとに行っている違法な監禁と拷問の解禁について、悪名高い虐待行為の深部を探っています。実際に尋問にあたった若い下級兵士たちは、軍規の教育もなされぬまま、どんな手段をつかっても情報を引き出せというプレッシャーのもとに自覚もないまま犯罪行為に手をそめることを強いられました。間接的に彼らにそれを強いた上官たちは、誰一人罪を問われていません。本来軍が守ってきた規律を、戦争経験のない現政権の幹部たちが無効化し、歯止めの聞かない状態をつくっておきながら、自分達は現場の犯罪行為に対する一切の責任を追求されない免罪符を手に入れるという事態が起こっています。

番組の最後に、ディスカバリーチャンネルによる「闇へ」の放送中止措置について短く触れます。この映画の向こう3年間の独占放送権を買ったディスカバリーチャンネルは、映画がアカデミー賞にノミネートされる前に、放送中止を決定しました。経営上の判断で波風を立てたくないという理由です。同局が放送もしないのに権利を握り続ければ、この映画をテレビで見ることができません。(中野)

アレックス・ギブニー(Alex Gibney) エミー賞など多数の賞にかがやくドキュメンタリー映画作家。「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したか」は米国脚本家組合賞などを受賞し、アカデミー賞候補にもなった。今回、脚本、監督、プロデューサー、ナレーターを担当した『闇へ』でアカデミー賞を獲得した。

Credits: 

字幕翻訳:玉川千絵子  字幕校正:永井愛弓
全体監修:中野真紀子