革命家チェ・ゲバラ 没後40年の遺産

2007/10/9(Tue)
Video No.: 
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30分

 キューバ革命の指導者チェ・ゲバラが1967年10月9日、ボリビアで同軍とCIAの共同作戦によって処刑されてから40年に当たる日の特集です。最初に1964年のゲバラの国連演説、その時のNYでの米報道陣によるインタビューをパシフィカ・ラジオのライブラリーから紹介、さらにボリビアのモラレス大統領の演説からゲバラに関する部分を抜粋しています。

 全体のコメンテータには『帝国のワークショップ:ラテンアメリカ、アメリカ合衆国、そして新帝国主義の勃興』などの著書があるニューヨーク大学グレッグ・グランディン教授(南米史研究)を迎えています。

 グランディン教授はキューバ革命前夜、CIAが画策したグアテマラのクーデターとゲバラの関係を説明します。またゲバラを「南米の革命的左派の星」とするならば、ゲバラ捕獲作戦を指揮し処刑の場にいたキューバ出身のCIA工作員フェリックス・ロドリゲスを「反革命の星」と表現し、両者の比較に焦点をあて当時の南米情勢のうねりをあぶり出します。グランディン教授は、ゲバラはキューバ革命に対する批判と対立した生前よりも死後、多様な価値観が存在する南米左派をまとめる象徴となり、また民主的でヒューマニスティックな手法を追求する現在の南米左派自体がゲバラの教訓であり遺産だと述べます。

 最後に90年代以降、米国や国際機関の主導で「押し付けられた」新自由主義と自由市場により貧困と経済停滞が蔓延する南米で、米国の影響から脱しようと模索する新世代の試みを、政治的・経済的自由や解放といった狭い定義の民主主義から、ゲバラの青春時代にもうたわれた社会的平等性や富の再分配までをも含む広義化への回帰と位置づけ、現在の南米情勢における「民主主義の再定義」の潮流の中にゲバラの思想の足跡を追います。

 休憩中に流れる音楽は、チリの故ピノチェト将軍が率いた1973年9月11日の軍事クーデターで殺害された歌手ビクトル・ハラの歌「チェのサンバ(Zamba del Che)」です。(甘糟)

★ DVD 2007年度 第5巻 「2007年12-08年1月」に収録

・エルネスト・チェ・ゲバラ (Ernesto "Che" Guevara) 革命家。1964年12月11日の国連総会でのスピーチ映像および、ジャーナリストのクリス・コッチ氏によるインタビューより
・アレイダ・ゲバラ (Aleida Guevara) チェ・ゲバラの娘。医師、キューバ親善大使。08年4月に来日予定。
・グレッグ・グランディン (Greg Grandin) ニューヨーク大学中南米史教授。近著に『帝国のワークショップ:ラテン・アメリカ、アメリカ、新帝国主義の勃興』がある

Credits: 

字幕翻訳:玉川千絵子、甘糟智子
全体監修:古山葉子