アフリカ未開発油田の国際争奪
ソマリア、スーダン、エチオピア...最近アフリカに関するニュースをよく耳にするようになりましたが、アフリカの抱えている紛争以外の問題、またそこに住む人々の生活について、私たちのほとんどはあまりよく知らないのではないでしょうか。
ニュースウィークやネーション誌にも寄稿しているジャーナリストのジョン・ガズビニアン氏は、自らの経験を通して目にした、生きたアフリカを描いた著書の中で、特に世界中で関心の集まる話題、「石油」に焦点を当てました。
意外と知られていない事実ですが、現在米国はサウジアラビアよりも多くの石油をアフリカから輸入しており、2015年までには輸入石油の25%をアフリカから得ることになる、とさえ言われています。特に中国を始めとするアジア諸国でもアフリカへの石油依存度が高まっており、アフリカの石油開発は大陸全土で進む一方です。
しかし、大手国際石油会社による利益の搾取、その分け前にあずかる腐敗した政府、そして自国の資源からなんの恩恵も受けないばかりか、貧困生活を強いられる地元の人々、という構図は、もう何十年も変わっていないのに、状況は改善されず、メディアの注目も最近ではあまり集めていません。
アフリカの石油事情の概要を前半で語った後、ガズビニアン氏は後半、最近取りざたされている中国の進出がアフリカに及ぼす影響や、石油労働者の実情、また米国のアフリカ政策などについても話題を広げます。中でも、不透明な政府が許されるわけではないが、それを理由に援助を断つことは、インフラがなくて困っている人々の答えに結局ならないのだ、というくだりは大変考えさせられます。
ダイヤモンドから野菜まで、様々な商品の原産地やその詳細な背景を知ろうとする動きが高まっている今こそ、自分たちが毎日使用する石油がどのような場所から来ているかを知ることが大切なのではないでしょうか。
欧米諸国によるアフリカの地図上の分割は20世紀初頭までにほぼ完結したとはいえ、地元の人々を無視した支配権争奪は、巧妙に形を変え、アジアの新たなプレーヤーも加わり現在も続いています。
あくまでも現地の人々を中心にすえるガズビニアン氏の視点と、アフリカの現状を知ってもらいたいという同氏の熱心なメッセージが伝わってくるセグメントです。(永井愛弓)
* ジョン・ガズビニアン John Ghazvinian
『ニューズウィーク』や『ネイション』に寄稿するジャーナリスト。ペンシルバニア大学の客員研究員。新著はUntapped: The Scramble for Africa's Oil(『未開発 アフリカ油田の争奪』)
字幕翻訳:永井愛弓 字幕編集:高田絵里
全体監修:中野真紀子