消えた石油はどこへ? ハリバートン社のドバイ移転を考える
ここ4年間で、イラクの石油が1日10万-30万バレルの割合で行方不明になっており、汚職や密輸に使われた可能性があることが、アメリカ政府監査局の調べでわかりました。
油田に油量計を取り付けるという普通の簡単な作業を、請負会社がなかなか遂行しなかったのが原因のひとつだと、CorpWatchのプラタップ・チャタジー氏は述べています。その請負会社が、ハリバートン社なのです。
ハリバートン社は、副大統領のチェイニーが、政権入りするまで経営最高責任者(CEO)を勤めていた会社で、2005年の株主総会では、前年のイラクでの戦争関連事業の売り上げが約7500億円になったと報告しています。
そのハリバートン社が、5月16日の株主総会を最後に、拠点をヒューストンからドバイに移転しました。アメリカの税金から200億ドルの請負費用を受け取る一方で、避税地ドバイへの移転に伴って税の支払いからは逃れることになると、チャタジー氏は指摘しています。また、将来何らかのスキャンダルが明るみに出たとしても、ドバイまではアメリカの法律が及ばないとも懸念しています。
一方で現在、イラクの石油の利権を外国の多国籍企業にしか売れないとする法律を、イラク議会で通過させようとしています。この法案は、多国籍石油企業が中心になって起草し、イラク議会に圧力をかけて通そうとしているものです。ボリビアでは最近、多国籍企業の石油利権を再交渉して、国民にも利益が分配される道を開いたわけですが、このイラクの法案では、将来的な再交渉の道を残さないものになっています。イラク議会は大反対していますが、この法律を通すことが、米軍のイラク撤退に向けたベンチマークになると、米国政府は圧力をかけているのです。
中東の「石油戦争」の実態を、具体的に教えてくれるセグメントです。(古山)
★ DVD 2007年度 第2巻 「2007年6-7月」に収録
* プラチャップ・チャタジー 調査ジャーナリスト。企業の不祥事を告発するグループ「CorpWatch」の代表。著書に Iraq Inc., A Profitable Occupation (『イラク株式会社、占領は儲かる』)
翻訳・字幕 :永井愛弓 高田絵里
全体監修 :古山葉子