軍病院に反戦歌はいらない ジョーン・バエズが傷痍兵のために歌うのを軍が拒絶

2007/5/4(Fri)
Video No.: 
3
11分

 フォーク歌手ジョーン・バエズは反戦活動家としても有名です。特に60年代から70年代にかけてのベトナム反戦運動で精力的に活躍し、日本でもよく知られています。その後もずっと現役シンガーとして活動し続けていますが、そんな彼女に最近降りかかった、小さいけれど印象深い出来事がありました。

 今年4月末バエズはウォルター・リード陸軍医療センターで歌う予定になっていたのですが、直前になって軍病院の側から出演を拒絶されました。「彼女は、この場所にふさわしくない」との当局者の発言があったそうです。

 そもそも彼女が兵士のために歌う予定だったこと自体がやや意外ですが、この企画はロック歌手ジョン・メレンキャンプから一緒にコンサートをやろうと申し込まれたのを受けたものでした。バエズは、軍隊の慰問ために歌うのは嫌だけど、傷ついて帰還した兵士に対しては、ささやかながら歓迎の気持ちを示したかった、と言っています。帰還兵に対するアメリカ社会の冷たさはエーレンライクなども指摘していますが、ホームレスの中には戦争体験者が非常に多いそうです。そういう風潮への批判をこめて、バエズは出演を承諾したらしいのですが、皮肉なことに軍の側から「ノーサンキュー」といわれてしまったわけです。

 番組の中で「花はどこへいった」という、ピート・シガーの曲をバエズがカバーしたものが流れていますが、あらためて聞きてみると、やはり、きわめつけの反戦歌です。今回の軍病院のやや稚拙な対応も、こうした歌のもつ力への恐れの現われのように思えます。(中野真紀子)

★ DVD 2007年度 第2巻 「2007年6-7月」に収録

☆ 「花はどこへいった」は、駒宮さんが訳詩をつくってくださいました。下に全部あります
☆ もう一つの歌「ジョー・ヒル」は、20世紀初めの組合運動のリーダーで、冤罪を着せられて銃殺された伝説のヒーローです。バエズはこれをウッドストックのコンサートで歌いました。映像は2005年テキサスでのコンサートのものです。

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『花はどこへ行った』

花はどこへ行った?
長い時間がすぎて
花はどこへ行った?
ずっと昔の話
花はどこへ行った?
みんな少女が摘んでしまったよ

いつになったらわかるのかな?
いつになったらわかるのかな?

少女はどこへ行った?
長い時間がすぎて
少女はどこへ行った?
ずっと昔の話
少女はどこへ行った?
みんな旦那さんを見つけたよ

いつになったらわかるのかな?
いつになったらわかるのかな?

若者はどこへ行った?
長い時間がすぎて
若者はどこへ行った?
ずっと昔の話
若者はどこへ行った?
みんな戦争に行っちゃった

いつになったらわかるのかな?
いつになったらわかるのかな?

兵士はどこへ行った?
長い時間がすぎて
兵士はどこへ行った?
ずっと昔の話
兵士はどこへ行った?
みんなお墓の中さ

彼らのお墓はどこへ行った?
長い時間がすぎて
彼らのお墓はどこへ行った?
ずっと昔の話
彼らのお墓はどこへ行った?
みんな花にかこまれているよ

いつになったらわかるのかな?
いつになったらわかるのかな?

(訳詩 駒宮俊友)

*ジョーン・バエズ (Joan Baez) フォーク歌手、反戦活動家

Credits: 

字幕・翻訳 駒宮俊友
字幕監修 中野真紀子