安価な抗エイズ薬の製造は是か非か? アボット社VSタイ政府

2007/4/26(Thu)
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 世界で3430万人いるといわれているHIV感染者/AIDS患者(1999年 UNAIDS調べ)。今では抗エイズ薬の開発のおかげで、かなりの長期にわたってHIVウイルスの増殖を防ぎ、AIDSの発症を抑えることが可能になっています。しかし、数百億かかるという開発費を捻出するために正規薬の値段は高く、2000年現在のアメリカで年間1万2000ドル(約150万円)に達していました。最もAIDSの被害を受けている発展途上国では、到底手が届かない価格です。

 昨年12月末にタイ政府は、「強制特許実施権」を発動し、米国の製薬会社メルク社の特許権を無視して、抗レトロウイルス薬「エファビレンツ」の国内生産を認可しました。同じ効力をもつ薬を安価に国内生産し、HIV陽性者の負担を軽減するためです。

 強制特許実施権とは、「国家の緊急事態」にある時に特許権者の許可無く医薬品を製造・販売する権利のことで、世界貿易機構(WTO)の「貿易関連知的財産権協定」(TRIPS協定)および2001年のWTOドーハ閣僚会議で採択された「TRIPS協定と公衆衛生に関する宣言」により、WTO加盟国に認められています。

 しかし、権利を守ろうとする医薬品会社アボット社などがタイ政府の行動に猛反発し、強制特許実施権の是非をめぐって、世界で論争が起こりました。

 翌月には、エイズ患者向けに無償でエイズ治療薬を提供してきたブラジルでも、強制特許権が発動され、メルク社のエイズ治療薬ストクの製造・販売が安く開始されることに。

 このセグメントでは、強制特許実施権の発動がいかに切実で、いかに多くの人命を救うのかを、3名のAIDS活動家から聞きます(古山葉子)

*ジョン・ウンファコン (Jon Ungphakorn) HIV/AIDS問題活動家、元タイ上院議員。 AIDS Access Foundation の事務局長。タイにおける安価な薬品の入手と公衆衛生の向上において、市民活動の最前線に。
*ジョイア・ムカジー (Dr. Joia Mukherjee) Partners In Health の医療部長。ハーバード大学医学部助教授。ハイチ・ルワンダなどでHIV/AIDS治療プログラムを監督。
*アヌージャ・シン (Anuja Singh) コロンビア大学学生。 Student Global AIDS Campaignメンバー

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翻訳・字幕:駒宮俊友
全体監修:古山葉子