バナナのチキータ社が コロンビアのテロ組織への資金提供を認める

2007/3/23(Fri)
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13分

 2007年9月17日、米連邦裁判所はコロンビアの武装勢力に資金供与していたとして、バナナ生産貿易の最大手企業チキータ・ブランド・インターナショナルに2500万ドルの罰金の支払いを命じました。チキータ社は2007年3月、米政府当局に対して、武装勢力に「用心棒代」として資金を供与していたと「自首」、今回はそれに対する判決となります。罰金の支払いは命じられたものの資金供与に関与した元幹部社員の懲役刑は見送られることとなりました。

 チキータ社は1997年から2004年のあいだ、米国にテロ組織指定されている武装組織「コロンビア自警軍連合」(AUC)に170万ドルを支払っていました。チキータ社の主張によれば、コロンビア北部ウラバにある同社所有のバナナ農場とそこで働く労働者、およびその家族を地元のゲリラからの「保護料」を武装勢力に強要されていたといいます。しかし、支払い期間が非常に長期にわたっている、その間コロンビア警察当局へ脅迫されているとの届出をした形跡が無い、チキータ社が専用に使っていた港から運び込まれた武器がAUCに渡っていた疑いがあるなど、チキータ社の「脅迫」説には大きな疑問符がつきます。今年に入ってから、AUCによって殺害されたバナナ労働者の労働運動活動家や、バナナ農園で撃ち殺された人の家族などが、チキータ社に損害賠償を求める訴訟を米連邦裁判所で起こしました。

 オハイオ州シンシナティを拠点とするチキータ社の前身ユナイテッド・フルーツ・カンパニーは1871年創業、米国におけるフルーツ生産貿易企業の最大手として君臨してきました。しかし、その生産拠点である中南米での企業活動ぶりは必ずしも褒められたものではないようです。1998年、シンシナティの新聞、エンクワイヤラー紙は18ページの特集を組み、チキータ社が中南米の農場で行っている労働者の不当な扱い、政府高官への贈賄、自社貨物を使った麻薬密輸などを暴露しました。この報道の取材方法に問題があったとしてチキータ社が提訴、エンクワイヤラー紙が謝罪記事を出すという結末になりましたが、そこで報道された内容の真偽については争われませんでした。チキータ社の中南米社会への影響は想像を超えるもので、1954年にユナイテッド・フルーツ社所有の未使用地を接収しようとしたグアテマラ政府に対して、CIAが後ろ盾になったクーデターが勃発、その後の30年にわたる独裁政と血で血を洗う内戦のきっかけとなりました。

 コロンビアの武装集団AUCは大地主や麻薬業者、軍などから資金供与を受けながら、過去20年間でコロンビアで起きた殺人の実に4分の3に当たる2万人の殺害に関わっているといわれています。1997年にAUCがチキータ社に接触して以来、ゲリラだけでなく、一般市民、特にバナナ農園での労働運動を組織しようとした人々が大量に殺されました。また、AUCのような武装勢力は中央政府の中にもコネをもち、実際コロンビアのウリベ政権の 有力者が武装勢力との癒着で逮捕されるなど、大きなスキャンダルにもなっています。

 チキータ社は彼らが主張するように脅迫のに屈していただけなのか?なぜ今になって、資金供与を自首したのか?このセグメントではワシントンの国際政策センターのアダム・アイザックソンとコロンビア人ジャーナリスト、イグナシオ・ゴメスにインタビューしながら、フルーツ生産貿易企業と武装組織の「暗い」つながりに光を当てます。(石川麻矢子)

★ DVD 2008年度 第1巻 「中南米の潮流」に収録

ジェームズ・トンプソン(James Thompson ): チキータ社の副社長。

ニコラス・スタイン(Nicholas Stein):調査ジャーナリスト。「フォーチューン」誌や「コロンビアン・ジャーナリズム・レビュー」誌にて、チキータのこの件に関して特集記事を掲載

アダム・アイザックソン(Adam Isaacson): ワシントンのNGO 国際政策センターにてコロンビア・プログラムのディレクター

イグナシオ・ゴメス(Ignacio Gomez):著名なコロンビア人ジャーナリスト。コロンビアのニュース番組「ノティシアス・ウノ」の調査ディレクター。首都ボゴタからの中継  

Credits: 

字幕翻訳:福谷麻由、加藤まり子
全体監修:古山葉子