「ゴリアテ」イスラエル社会でレイシズムが加速
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マックス・ブルーメンソールの新著Goliath: Life and Loathing in Greater Israel (『ゴリアテ ~憎しみの国 大イスラエルでの生活』)は、 ネタニヤフ政権の下でイスラエル社会が大きく右傾化していく様子を詳しく紹介しています。
ベンヤミン・ネタニヤフが二度目に首相の座についたのは、イスラエル軍がガザ地区で行った大規模な攻撃に対する国際的な批判が続いている2009年3月でした。当初は左派や中道派との大連立を目指しましたが、カディマ党との協議に失敗し、極右の「イスラエル我が家」を含む右派4党に労働党を加えた連立政権となりました。カディマ党首ツィピ・リヴニは「イスラエル史上、最も右翼的な政権」と評しました。
ブルーメンソールは、ネタニヤフ政権下のイスラエル社会を「占領政策がイスラエル内部に戻ってきた」と表現しています。西岸地区の過激な入植者たちがイスラエル内部に戻ってデモや占拠を行い、イスラエル内に居住するアラブ人やアフリカ系の移民とのあいだに摩擦を起こしているのです。イスラエルの新聞ハアレツ紙も アフリカ系移民への差別が加速していることを伝えています。彼らは主にエラトリア、スーダン出身の非ユダヤ系の移民です。現在54000人ほどいるとされていますが、右派系の議員たちが「ユダヤ人国家」としてのイスラエルに対する脅威になると主張しています。
こうしたレイシズムの高まりについて、ブルーメンソールはイスラエルのユダヤ人の間に存在する格差が要因だとしています。 ユダヤ人社会で低い地位に置かれているロシア系移民やミズラヒームと呼ばれるイスラム圏出身層が、アシュケナージと呼ばれるヨーロッパ系の富裕層に対して「イスラエル人らしさ」(Israeliness)を示すために暴力的なレイシズムを表出させるのだというのです。
米国の一流大学を卒業し、ミット・ロムニーとボストン・コンサルティング社で同僚だった経歴をもつネタニヤフ首相を、ブルーメンソールは「米国にイスラエルの立場を売り込むセールスマン」と呼びます。対外的にはイスラエルの広報活動を精力的に行い、国内では非ユダヤ人を追放あるいはゲットーに押し込める政策を推し進めることで「ヨルダン川から地中海まで」を支配に収めるのがネタニヤフの計画であり、「イスラエルの王」(The King of Israel)として「イスラエル史上初の純粋な右派首相」の地位を確実なものにすることを願っているとブルーメンソールは言います。(桜井)
*マックス・ブルーメンソール(Max Blumenthal):米国人ジャーナリスト。Goliath: Life and Loathing in Greater Israel(『ゴリアテ ~憎しみの国 大イスラエルでの生活』)、Republican Gomorrah: Inside the Movement that Shattered the Party(『共和党のゴモラ ~党を破壊した運動の内幕』)の著者
字幕翻訳:斉木裕明 校正:桜井まり子 全体監修:中野真紀子