チョムスキー講演:トランプ政権の登場で人類の存続に危険信号
ちょうど一年前に放送されたお正月特番です。2016年にデモクラシー・ナウ!は20周年を向かえ、12月5日に盛大な記念行事を行いました。ノーム・チョムスキーとハリー・ベラフォンテという超大物アクティビストが初めて同じ舞台に上って対談し、パティ・スミスが歌で盛り上げるという豪華な催しでした。その中からチョムスキーの講演部分に字幕をつけました。最後の部分にパティ・スミスのパフォーマンスもちょっぴりあります。
講演が行われたのは大統領選挙から1カ月も経たない時期で、トランプ政権の誕生にみな戦々恐々としていました。そんな中でいち早くチョムスキーが指摘したのは、トランプと共和党の政策が気候変動という科学的事実を否定し、前年にようやく合意に漕ぎ着けた気候変動への新たな国際的取り組み(パリ協定)からの離脱を宣言して、人類全体を存亡の危機に陥れるということでした。ただでさえ不完全なパリ協定は、その補強を目指したマラケシュ会議が米国の政権交代を受けてほぼ成果なく終わりました。
気候変動が引き起こす異常気象や自然災害は世界中で多数の人々の生活圏を奪います。大量の難民の発生や、水資源をめぐる国家間の争いは、インド・パキスタン間の緊張のように核保有国が絡む場合、世界全体を巻き込む終末的な破局をもたらしかねません。自然環境の崩壊と核戦争という人類の存続を脅かす二大リスクが一点に収斂するのです。その意味で、米国の共和党は世界一危険な集団かも知れません。
こうしたことの背景には、ここ数十年で顕著になった米国の国際的孤立があるとチョムスキーは指摘します。自由世界の盟主として世界一の富と武力を誇ってきた米国の覇権はもはや見る影もありません。この講演から後の一年は、チョムスキーの指摘が極めて正しかったことを証明するものとなりました。(中野真紀子)
ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)世界的に有名な反体制政治活動家、マサチューセッツ工科大学(MIT)名誉教授、言語学者、著述家。
字幕翻訳:長沼美香子 / 校正:中野真紀子