ブログ:トロイ・デイビスと死の政治 エイミー・グッドマン(2011.9.14)

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トロイ・デイビスと死の政治 エイミー・グッドマン(2011.9.14)

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死が喝采を浴びる、昨今の米国だ。 最近フロリダ州タンパで開かれた、共和党の大統領候補討論会の席上、CNNのキャスターが質問した。「医療保険に加入しないことにした人が、もし大病にかかった場合、死ぬにまかせていいものでしょうか?」。「いいとも!」という喝采が即座に会場を埋め尽くした。 別の討論会では、大統領候補に名乗りをあげたリック・ペリー テキサス州知事への質問で、知事が死刑執行を熱狂的に支持しているという話題があがると、知事支援の喝采がおこり、拍手はしばし鳴り止まなかった。 司会をしていたNBCニュース局のブライアン・ウィリアムズは、聴衆の反応を受け、こんな質問で切り返した。「234人が死刑になったと口にしただけでこの喝采です。この『熱狂』は、いったい何でしょう?」

9月21日にジョージア州での執行が予定されているトロイ・デイビスの死刑判決に挑戦することが、とても重要なのは、この「熱狂」のせいだ。 デイビスはジョージア州サバンナ市で非番の警官を殺害したとして有罪判決を受け、もう20年近くも死刑囚監房にいる。 有罪判決後、警察官以外の証人9人のうち7人が、警察に脅され無理強いされていたとして証言を撤回した。 デイビスと殺人を結びつける物的証拠は皆無だ。

米最高裁判所は、デイビスを無罪にするには証拠聴聞が必要だと裁決した。 証人のうち数人は、証言を撤回していない証人の一人シルベスター・”レッド”・コールズが、真犯人だと特定している。証人たちは、デイビスの有罪判決後にコールズが、警官を撃ったのは自分だと言ったと証言したが、地裁のムーア判事は裁判の手続き上の理由を盾にその証言を認めることを拒否し、 2010年8月の裁判所命令で「デイビスは無実ではない」と総括した。

陪審員だったブレンダ・フォレストの意見は違う。 2009年に CNN のインタビューを受けたフォレストは、デイビス裁判を思い出して、こう言った。「彼がやったと、証人が口を揃えて言ったんです。」 その後、7人の証人が証言を撤回した。 「今わかっていることがあのときにわかっていたら、トロイ・デイビスは死刑囚にならなかった。 判決は無罪だったでしょう」。

トロイ・デイビスには、ストライクが3つ重なった。 アフリカ系アメリカ人であることで、ワンストライク。 白人の警察官殺しの嫌疑だったことで、ツーストライク。 3つ目のストライクは、ジョージア州にいたことだ。

1世紀以上前に、伝説的なジャーナリスト、アイダ・B・ウェルズは、命を危険にさらしながら、保守的な南部で蔓延するリンチの報道を始め、醜聞を曝いた。 1982年には、『南部の恐怖―リンチ法のすべて』を1895年には続編の『赤い記録』を出版して、数百件にのぼるリンチ事件の詳細を知らせた。 中に、こんなくだりがある。 「ジョージア州ブルックス郡。12月23日。キリスト教のこの国がクリスマスの祝祭の準備に余念がない時に、1日に7人のニグロがリンチに会った。白人を殺したパイクという名のカラードの居所を教えなかったり、教えることができなかったからだ・・・ ジョージア州はリンチ州リストの首位を占めている」。

デイビスの計画された処刑は、暴徒の手によるものではなく、ジャクソン郊外にあるジョージア刑務所の無味乾燥な蛍光灯の光に照らされた施設で執行される。
ジョージア州はトロイ・デイビスをロープや鎖で木に吊すこともない。ビリー・ホリデイが、「奇妙な果実」で、こう歌ったようには: 「南部の木に奇妙な果実が/血塗られた葉、血塗られた根/黒い身体が南部のそよ風に揺れている/ポプラの木にぶら下がる奇妙な果実」。 恩赦・仮釈放委員会の介入がない限り、ジョージア州は致死量のペントバルビタールを投与する。 ジョージア州が処刑にこの新薬を使うはめになったのは、3月に、連邦麻薬取締局がチオペンタールナトリウムの輸入は非合法だと州を告発し、没収してしまったからだ。

NAACP(全米黒人地位向上協会)のベン・ジェラス会長は、「我が国の司法制度の最悪の例」と言う。 アムネスティ・インターナショナルは、恩赦・仮釈放委員会に、デイビスの判決の減刑を求めている。 「恩赦委員会は、有罪に関する疑惑が消えない限り、死刑を行うべきではないとし、デイビスの2007年の処刑を延期させました」とアムネスティ・インターナショナルUSAを代表してラリー・コックスは言う。 「2度ならず処刑予定日があがっては消えました。はっきり言えることはほんの一握り、デイビスが犯罪を犯したという証拠はますます薄れています。 アムネスティ・インターナショナルは、委員会にデイビスの判決を終身刑に減刑し、ジョージア州が取り返しのつかない間違いを犯さないようにするよう求めています」。仮釈放委員会が耳を傾けるべきなのは、人権団体だけではない。 ローマ法王ベネディクト16世も、ノーベル平和賞受賞者のジミー・カーター元大統領と南アフリカのデズモンド・ツツ大司教も、恩赦を求めている。 なのに、委員会は死に喝采を送る暴徒に耳を貸すのだろうか。(翻訳:大竹秀子)

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調査協力:デニス・モイニハン

© 2011 Amy Goodman
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