ブログ:サンフランシスコ・ベイエリア ムバラク化したBART警察 エイミー・グッドマン(2011.8.17)

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サンフランシスコ・ベイエリア ムバラク化したBART警察 エイミー・グッドマン(2011.8.17)

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サンフランシスコで起きた警官によるホームレスの男性の殺害が、チュニジアからシリアまで広がった「アラブの春」の民衆反乱に重なるのは、その後に続いた抗議運動への弾圧だ。デジタルネットワーク化の進んだ現代社会では、通信能力は次第に基本的な権利と見なされつつある。開かれたコミュニケーションは、革命を煽る。独裁者を引きずり降ろすことだってできるのだ。自国民の力を恐れる政府は、抑圧と脅しで民衆を黙らせる。タハリール広場でもサンフランシスコの繁華街でも、それは同じだ。

7月3日、チャールズ・ブレア・ヒルはベイエリア高速鉄道(BART)シビックセンター駅のプラットフォームでBARTの警官に射殺された。地下鉄のプラットフォームで男が酒を飲んでいるとの通報があり、BART警察が出動した。ヒルは警官2名にウォッカの瓶を投げつけナイフで脅したため、やむなく撃ったと警察は言う。ヒルは病院で死亡が確認された。

ヒル殺害後ただちに、BART警察に対する激しい抗議が火を噴いた。2009年元旦にオスカー・グラントがBART警察に殺された時とよく似ていた。グラントは手錠をはめられ地下鉄のプラットフォームにうつぶせにされ、一人の警官に押さえつけられているところを、別の警官に背中をじかに撃たれた。処刑現場が、少なくとも2つの携帯電話ビデオに収められた。発砲したBART警官が殺人の罪で服役した期間はわずか7カ月だった。
シビックセンター駅は7月11日、大規模な抗議行動によって閉鎖された。次回の行動が予定される8月11日が近づくと、BART警察は米国では前例のないことを行った。地下鉄構内の携帯電話の中継塔を閉鎖したのだ。
「市民の政治的な抗議行動を阻む目的で政府が携帯電話網を遮断するなど前代未聞です」とアメリカ自由人権協会(ACLU)のキャサリン・クランプは話す。「携帯電話網は、今やみんなの必需品です。抗議行動とは関係のない様々な連絡にも使われているのに、警察はお構いなしです。」

BART当局は公衆の安全のために携帯電話サービスを遮断したと弁明したが、世界中のフリースピーチ活動家からすぐさま批判を浴びた。BARTの検閲に反対する人びとは、ツイッター上にムバラクとBARTの名をつなげた#muBARTakというハッシュタグを作り、エジプトとのつながりを強調した。

追い詰められたエジプトの独裁者ムバラクが携帯電話網とインターネットを閉鎖した時、タハリール広場にいた人々は発信を続けるための迂回策を編み出した。言論の自由と開かれたネット空間を推進するボランティア集団「テレコミックス」は、300ほどのダイヤルアップ回線を設置して、エジプトの活動家やジャーナリストがインターネットを使って、進行中の革命をツイートしたり、写真や動画を投稿できるように支援した。

テレコミックスの活動家ピーター・フェインは、こう語る。「チュニジアでも、エジプトでも、リビアでも、シリアでも、我々はインターネットを遮断しようとする政府の強大な力に逆らい、ネットを活かし続けようと大奮闘しました。言論や通信の自由を支援する一番の方法は、政府がこういった権利を尊重するのを待つのではなく、私たちが権利を行使できるツールを構築することだと、テレコミックスは確信しています。」

ハッカー活動家たちは、海外の革命だけでなく米国内の抗議行動も支援する。BARTによる携帯電話網の遮断に対抗して、アノニマス(名無しさん)と呼ばれる、ゆるやかに連帯したハッカーたちがBARTのウェブサイトを閉鎖した。アノニマスはまたBARTの乗客2000名以上の情報を公開し、BARTのお粗末なコンピュータ・セキュリティ管理を暴いて物議をかもした。

BART警察によるとFBIがアノニマスの攻撃を捜査中だという。デモクラシー・ナウ!の番組で「コマンダーX」と名乗るアノニマスのメンバーにインタビューした。正体がわからないよう音声処理を施し、彼は電話越しにこう語った。「怒りに震えています。BARTのようなちんけな組織が無実の人々を殺す。ここ数年で2~3人も。あげくの果てに携帯電話網を遮断する暴挙に出て、中東の独裁者そっくりにふるまっている。よくもまあ、米国でそんなことを。」

新旧の惨事が皮肉に重なり合う中で、私たちはその両方の生存者たちの声に耳を傾けるべきだ。(翻訳:田中泉)

調査協力:デニス・モイニハン

© 2011 Amy Goodman
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