ケリー国務長官の広島訪問の陰で 米国は1兆ドルかけて保有核兵器をひっそりと刷新
オバマ大統領は5月26、27日に三重県で開催されるG7首脳会議(伊勢志摩サミット)に出席の後、被爆地の広島を現職の米国大統領として初めて訪問する予定です。今回の訪問は、日米が歴史問題を乗り越えて強固な同盟関係を築き、「核なき世界」の実現に向けた国際的機運を盛りあげる歴史的な一歩とうたわれています。しかし実際の政策を見ると、両国の首脳にそんなアピールをする資格があるのかどうかは疑問です。国民の反対をねじ伏せて原発を推進する日本政府には核兵器保有への下心が透けて見えますが、米国だって膨大な核兵器庫の刷新をひっそりと進めているのです。
「核なき未来」を目指すと標榜しながら、オバマ政権が現在進めているのは、今後30年間で1兆ドルをつぎ込み、核兵器を小型化し精度を上げて、実戦に使えるものに置き換えていく計画です。しかし、被害が局地的に限定されるからといって核戦争の危険は減少するとは限りません。破壊力の大きさゆえに「張子の虎」だった大型核兵器よりも、実際に使用できる小型核兵器のほうが、報復攻撃や先制攻撃の可能性を考えれば何倍も危険ではないのでしょうか。
米国首脳のヒロシマへの献花を単なる政治宣伝に終わらせないために、こうした核兵器廃絶に逆行する動きには注意を喚起したいものです。この米国の新型核兵器の問題については、オバマ大統領より一足先に、ジョン・ケリーが国務長官として初めて今年4月に広島を訪問したときから、デモクラシー・ナウで何度も取り上げています。米国の核兵器刷新計画について報告書を出した「核の説明責任を要求する市民団体連合」から、著者の一人、マリリア・ケリー氏を招いたインタビューをご覧ください。(中野真紀子)
*マリリア・ケリー(Marylia Kelley):トライバレー・ケアーズ(Tri-Valley CAREs:放射能環境に反対するコミュニティ)の代表。同団体は最近、Alliance for Nuclear Accountability (核の説明責任追及同盟)と連携してTrillion Dollar Trainwreck(1兆ドルの大惨事) という報告書を発表し、オバマ政権が30年間で1兆ドルをかけて米国の核兵器庫を全面的に刷新する計画を進めていることを明らかにした。
字幕翻訳:長沼美香子/校正:中野真紀子