「20世紀のメディア王」ルパート・マードック

2007/8/2(Thu)
Video No.: 
1
24分

2007年8月、ルパート・マードック率いるニューズ・コープ社が、米国でもっとも信頼されてきた大手新聞の一つ、ウォールストリート・ジャーナル紙を所有するダウジョーンズ社の買収に成功しました。この時点でニューズ・コープ社は世界中で176の新聞を所有したことになります。米国ではここ数年、マードックのような“メディア王”による報道機関の占有が進んでいます。報道の公正さと質の低下を危惧するジャーナリストたちは、利益追求を優先させる企業家によってメディアが売買される状況を深刻な危機であると声を上げています。

ルパート・マードックは、どんな新聞も一度買収すると、その編集方針に介入して、いわゆる「売れる」記事を満載したタブロイド紙にしてしまうといわれています。以前はリベラルとして知られていたニューヨーク・ポスト紙も1976年にマードックが買収、今では右よりのゴシップ記事が満載されたタブロイド紙の代表格となっています。今回の買収劇で、マードックは伝統あるウォールストリート・ジャーナル紙の編集方針には介入しないという約束をしましたが、記者たちはマードックを信用せず、この買収に強く反対しました。

いくつもの異なった視点を持つ独立した報道機関が共存することで、情報の受け手は、何が公正で正確な報道なのか自分で判断する自由を保持することができます。しかし、報道の独立を守る団体フリープレスのクレイグ・アーロンによれば、米国人が毎日目や耳にする情報は、現在5つほどの企業によって牛耳られているといいます。マードックのような、新聞、ラジオ、テレビ、映画など世界中のあらゆる大手メディアを占有するごく少数の人間が、それらすべてのメディアが自身の政治的視点を反映した情報を流すよう操作し始めた時、私たちは非常に危険な状況に置かれているといえるのではないでしょうか。(石川麻矢子)

★ DVD 2008年度 第3巻 「メディアの現在」に収録

*シドニー・シャンバーク(Sydney Schanberg)ピュリッツァー賞受賞のジャーナリスト。ニューヨーク・タイムス紙、ビレッジ・ボイス紙などで働いた経歴を持つ。

*スティーブン・ヤウント(Steven Yount)ダウ・ジョーンズ社の従業員2000人を代表する労働組合IAPE(独立出版労働者協会1096支部)の委員長。ウォールストリート・ジャーナル・ラジオのキャスターも務める

*クレイグ・アーロン(Craig Aaron)メディア改革推進団体「フリープレス」の報道担当。

Credits: 

字幕翻訳:石川麻矢子 / 校正:関房江
全体監修:中野真紀子