核ホロコースト 増大する核兵器事故の危険性とその秘密主義

2013/9/18(Wed)
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16分

「核弾頭搭載ミサイルから燃料が漏出!整備員のミスが原因」
「ノースカロライナ州で水爆が誤落下-核爆発まであと一歩」
これらは実際に起きた事件であったにも関わらず、上記のような見出しが新聞に載ることはありませんでした。核関連の情報は、それがいかに市民にとって重要な情報であれ、政府が厳重に管理し、機密扱いにしてきたからです。

著書『ファストフードが世界を食いつくす』で有名なエリック・シュローサー記者の新著Command and Control: Nuclear Weapons, the Damascus Accident, and the Illusion of Safety(『指揮と統制:核兵器、ダマスカス・アクシデント、そして安全幻想』)によると、米国はこれまで何度も、すんでのところで自国での核爆発事故を避けてきました。それどころか、考えられないような単純なミスが原因で、戦争勃発まで間一髪の状態になったことすらあるのです。

シュローサー記者は、最近になって情報公開法に基づき機密解除された、膨大な量の政府文書や多岐に渡る関係者へのインタビューを基に、米国の核兵器管理が抱えるさまざまな問題を指摘しました。その上で、核に関しては「いかなるミスも許されない」と述べ、そのような重大なテーマだからこそ、もっと情報をオープンに開示し、一般市民による議論がなされるべきだと語ります。それがどれだけ小さなミスや事故であれ、結果はとりかえしのつかない悲惨なものになるからです。

他国の核問題はとりあげても、自国の問題についてはよく知らない-核に関する情報を政府が機密管理しているのは、米国だけでなく世界中の核保有国の共通点でしょう。核兵器保有国ではない日本でも、原子力発電所に関する情報管理には共通する姿勢がみられます。しかし日本ではすでに、「いかなるミスも許されない」状況で、起きてはならないはずの事故が起こってしまいました。原発問題の今後のあり方について、シュローサー氏の本から学べることは多いのではないでしょうか。(永井愛弓)

*エリック・シュローサー(Eric Schlosser): 『ファーストフードが世界を食いつくす』の著者。新著はCommand and Control: Nuclear Weapons, the Damascus Accident, and the Illusion of Safety(『指揮と統制:核兵器、ダマスカス・アクシデント、そして安全幻想』)

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字幕翻訳:阿野貴史 校正:永井愛弓
全体監修:桜井まり子