米国公民権運動を20代の信念で支えたジョン・ルイス 投票権獲得の闘いを語る

2012/7/10(Tue)
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50分

フリーダムライドの運動に加わった時、ジョン・ルイスは20歳そこそこの大学生。ガンジーの流れをくむ非暴力直接行動を信奉し、頭を強打され激しい暴力と憎悪にさらされ40回も逮捕されながらも人々の良心の力を信じました。キング師が「私には夢がある」という有名な演説をした1963年のワシントン大行進では、SNCC(学生非暴力調整委員会)の議長として若者を代表して演説を行ない、南部での投票権獲得運動でも武装した警察の隊列に向かって停まることなく行進を続けました。その彼の徹底インタビューです。

市民運動の大成功例として語り継がれる公民権運動ですが、その中にさまざまな立場の違いがありました。妥協を許さぬ若者たちと遅くとも確実な前進をめざす年長者との間の微妙だが結局は埋まらなかったギャップはワシントン大行進での演説でどうしようもなく明らかになりました。マルコムXとの出会いの思い出も語られます。

大勢の人々が身体を張り、負傷し、逮捕され、死者まで出した投票権獲得運動。そうやって50年近くも前にマイノリティや社会的弱者たちにも、民主主義の基本的の権利である投票権が確保されました。ところがここ数年、「投票者ID提示法」なる州法で社会的弱者から投票権を奪い取ろうとする動きが共和党支持者を中心に高まっています。ルイスは怒りを超え、情けなくて涙が出そうだと訴えます。
公民権活動家として生きたルイスは、いまでは民主党のベテラン議員です。キング牧師とも共有したベトナム反戦の精神を忘れず、いまも反戦を唱えていますが、「じゃ、オバマ大統領の無人機攻撃はどうなるの?」とエイミー・グッドマンのルイス議員への質問は容赦ありません。

余談になりますが、ルイス議員といえば思い出すエピソードがあります。フリーラムライダーズの一員になるため、首都のワシントンに行った時、出発前に中華料理をごちそうになり、世の中にこんなおいしいものがあったのかと大感激したそうです。アラバマの小作農家の家に生まれ育った彼にとって想像もできなかった新しい世界の大発見だったのかもしれません。公民権運動の活動の時代に青春を過ごすという幸運にめぐまれたルイスは、南部の暴力に立ち向かう最前線に身ひとつで立ち、喜びと苦しみを文字通りひとつひとつ「体験」しながら、歴史の前進のために奉仕する自分の場を見つけて行きました。(大竹秀子)

*ジョン・ルイス(John Lewis): ジョージア州選出の民主党下院議員。公民権運動の指導者の一人。学生の頃から、フリーダムライド運動(自由のための乗車運動)に加わり、SNCC(学生非暴力調整委員会)の議長も務め、有名な1963年のワシントン大行進では若い層を代表して演説をおこなった。その後も非暴力直接行動を貫き、投票権運動でも重要な役割を演じたが、尊敬するマーティン・ルーサー・キング師、ロバート(ボビー)・ケネディの暗殺後、下院議員となり現職。

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字幕翻訳:川上奈緒子/校正:大竹秀子/サイト掲載:桜井まり子