ダーバン合意 約束を反故にして途上国に責任を転化する先進国の常套手段

2011/12/12(Mon)
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ダーバン気候変動会議(COP17)は2日間の会期延長の末、法的拘束力のある唯一の条約「京都議定書」の延命(第2約束期間)が合意され、これに非加盟の国々や義務を負わない国々をも取り込んだ新たな枠組みの交渉を開始し、2020年の発効をめざすことになりました(ダーバン・プラットフォーム)。多国間の交渉による気候対策の枠組みづくりの重要な一歩と喧伝されますが、環境団体の多くは、これではまったく不十分だと非難します。国際環境団体フレンズ・オブ・ジ・アースのケイト・ホナーは、「富裕な国々が、これまでの約束をすべて反故にして責任を逃れるという昔からのパターンの繰り返しです。新たな協定の交渉のために10年近くも費やして行動が遅れ、それまでは低い目標に縛られます」といいます。そうすることで、問題を招いたわけでもないのに被害を受ける途上国に負担を押し付け、尻拭いをさせるつもりです。

欧米諸国は中国やインドが負担を免れていることが多国間の対策の進展を阻む最大の要因だとしていますが、一人当たりで換算すればインドのCO2排出量は米国の10分の1であり、ヒマラヤの氷河融解による影響も受ける被害国でもあります。もっと深刻なのは気候変動で他の地域に比べ1.5倍の気温上昇が起きるアフリカです。世界全体では3~5℃の気温上昇でも、アフリカ大陸では7~8℃の上昇です。現在の排出量規制のまま10年近く放置されるだけで、アフリカにはすでに死刑宣告です。大陸東部から北部にかけての大規模な旱魃やニジェールの洪水で数百万人が難民となっていますが、国際報道の関心を引くことはありません。

ダーバンには市民運動組織を含め2万人も集まったと言われています。こうした市民グループが国際的に連携し、自国の気候変動交渉の責任者に対して圧力をかけ、途上国に転自分たちの責任を転嫁するのをやめさせ、米国が提案するような、気候対策への民間セクターの活用という益よりも害をもたらしそうな構想に対抗する逆提案、たとえば金融取引課税のようなものを推進していくことが今後の目標になるようです。(中野真紀子)

*ケイト・ホーナー(Kate Horner) 環境NGOフレンズ・オブ・ジ・アース(地球の友)の政策アナリスト。
*ボビー・ピーク(Bobby Peek) 南アフリカの環境正義組織groundWorkの代表。

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字幕翻訳:natsu/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗