マフムード・マムダニが語るリビア アフリカ連合の「危機」 南スーダンの前途

2011/9/14(Wed)
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政治学者マフムード・マムダニがリビア・南スーダン独立・米国のムスリムについて語ります。NATO軍がリビアに空爆を始めて約半年、首都トリポリが陥落した時のインタビューです。マムダニは、アフリカ連合に属する南アフリカとナイジェリアが国連安保理のリビア制裁決議で賛成票を投じていたことをあげ、「アフリカ連合そのものが危機に陥っている」と批判します。アフリカ連合はリビアへの干渉に消極的な態度をとっていたにもかかわらず、NATO軍の空爆を容認するという矛盾した行動を取っていたのです。「それぞれの国の権益に応じルールを変えるご都合主義のアフリカ連合はもう終わっています」とマムダニは厳しく批判します。

アフリカ連合がアフリカ諸国を代表しているのかという疑念はそのまま、欧米によるアフリカ支配への懸念につながります。このセグメントの放送から約1カ月後、リビア指導者カダフィ氏は国民暫定評議会の戦闘員に殺害されました。この時、逃亡するカダフィ派の車列を空爆したのはNATO軍の戦闘機です。 NATO軍はあくまでも人道目的で介入したことになっていますが、カダフィ氏の殺害にNATO軍が大きな役割を果たしたのであれば、国連決議のはなはだしい逸脱にほかなりません。

マムダニは南スーダン独立についても楽観視はできないと警告します。南スーダンの独立により南コルドファン州、青ナイル州などが北スーダンの州となりましたが、これらの境界州にはスーダン人民解放軍(SPLA)と協調してきた民兵組織があります。SPLAがかかげた統一スーダン構想を支持していた彼らは、独立路線に変更したSPLAに裏切られたと感じているとマムダニは言います。事実、南スーダン独立前にすでに、南コルドファン州でSPLA系の民兵と北スーダンの軍との衝突が起きています。

2001年の9.11攻撃から10年以上がたちましたが、米国政府はいまも国内のムスリムに対して強硬姿勢を崩していません。マムダニによれば、米国のムスリムはアメリカ合衆国と同じくらい長い歴史があり、黒人奴隷の約1割はムスリムだったと言います。現在もアフリカ系米国人の約半数はムスリムです。人種や宗教に基づく差別構造は、弾圧に対する反動を何度でも再利用しながら、行政司法立法すべての面でますます根を深く下ろしていくように思えます(桜井まり子)

*マフムード・マムダニ(Mahmood Mamdani)ウガンダのマケレレ大学・NYコロンビア大学教授。著書にSaviors and Survivors: Darfur, Politics, and the War on Terror(『救う者と生き残る者 ダルフールと政治とテロとの戦い』『良いムスリムと悪いムスリム 米国と冷戦とテロの根源』など。

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字幕:桜井まり子/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗