ブラックウォーター創始者がアラブ首長国連邦で「キリスト教十字軍」を創設

2011/5/18(Wed)
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2007年イラクのニソール広場民間人銃撃事件など数々の不祥事を起こした民間軍事請負会社ブラックウォーター(Xe社に社名変更)創業者、エリック・プリンスが新事業をおこしました。スケイヒルによると、プリンスは部下5人がニソール広場事件で起訴された後、ブラックウォーター社を売却、2010年にアラブ首長国連邦(UAE)に移住しました。「インディ・ジョーンズのように歴史を教えたい」と言ったそうですが、移住後まもなく、アブダビのモハメド皇太子に事業をもちかけ、800人の部隊からなる「リフレックス・リスポンセズ」社(通称R2)を設立、UAE内外の治安維持にあたる契約を結んでいたことがわかりました。アラブ世界で起こっている民主化運動がUAE内で起こった際の鎮圧も任務に含まれています。
 
アラブ首長国連邦は7つの首長国からなっていますが、大統領・副大統領はアブダビとドバイ首長国から選ぶことが慣例となっています。大統領は代々アブダビのナヒヤーン家が出すことになっており、プリンスと契約を結んだのは次代アブダビ首長と目されるモハメド皇太子でした。

スケイヒルが以前報じたように、プリンスは自らを「イスラムを地上から抹殺する世界戦争の十字軍戦士」と呼んでいました。スケイヒルによると、プリンスにはムスリムを雇わないというルールがあるそうです。ムスリムは同じムスリムを殺す任務にはあてにできないというのがその理由です。「ムスリムを地上から抹殺する十字軍兵士」を自称するプリンスの傭兵軍は、ムスリムを殺すことも目的の1つなのでしょうか。

スケイヒルはリビアについても興味深い指摘をしています。「UAE軍が声明の中で欧米軍事企業の業績を特に高く評価していたのは、他国での軍事作戦に従事できるようになる点でした。リビアはいま絶好の傭兵市場です。反乱側とも政府側とも契約できます。プリンスの会社がUAE軍を通してリビアに行くとすれば、米議会や世界中の政府の関心を集めるでしょう。リビアに特殊部隊が行くのは時間の問題です」。

ムスリムの抹殺を願うプリンスがイスラム教の国の王族と手を組むのも、民衆の反乱に備えたい王族とプリンスの利害の一致があるからでしょう。米国での訴追を逃れるために移住したといわれるプリンスも、王族の庇護があれば安心です。スケイヒルはそれを「打算づくの恋愛結婚のようなもの」と例えました。(桜井まり子)

*ジェレミー・スケイヒル(Jeremy Scahill) 調査報道ジャーナリスト。『ブラックウォーター 世界最強の傭兵軍の勃興』の著者。ネイション誌の国家安全保障特派員 最近のブログ記事は. 'Erik Prince, You're No Indiana Jones
*サメア・ムスカティ(Samer Muscati) ヒューマンライツウォッチのイラク・アラブ首長国連邦調査員

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字幕翻訳:桜井まり子/校正:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗