自国への軍事介入拡大を要請する元リビア国連大使
2011年2月15日に始まった反政府デモへの弾圧で、リビアのカダフィ政権に対する欧米の批判が高まるなか、リビアの政府高官が次々と離反しました。最初に離反したのがリビア国連代表部のイブラヒム・ダバシ次席大使です。政権側から反政府側リビア暫定国民評議会の国連代表となったダバシ氏に、離反の理由、NATO軍によるリビア空爆などについてエイミー・グッドマンが鋭い質問を投げかけます。
デモ隊に発砲するなど武力鎮圧に出たカダフィ政権に対し、国連安保理は素早く非難声明を出しました。3月に入るとNATOやEUがカダフィ政権の即時退陣を要求、国連安全保障理事会は17日、リビア上空の飛行禁止区域設定を盛り込んだ決議案を採択しました。(決議案は英国フランスの提案で、中国、ロシア、ドイツ、インド、ブラジルは棄権)この国連安保理決議には、住民を保護するため「あらゆる必要な措置」を取ると書かれており、3月19日、人道的介入を名目にNATO軍がリビアに空爆を開始しました。
軍事介入の理由となった民間人への武力行使について、エイミーはボストン・グローブ紙の記事を紹介しながら、「第三の都市ミスラタを視察した人権団体ヒューマンライツ・ウォッチは、カダフィ軍が市民の虐殺を避けて反乱軍だけに的をしぼっていると報告している」とダバシ氏に問いかけました。ダバシ氏はこれを否定、「西部山間部は昨日だけで120人が死亡し、ミスラタでも数十人が死亡した」と述べました。すかさずエイミーは「NATOの介入が弾圧を加速させた可能性は?」と切り返します。しかし元大使は「弾圧や攻撃は最高潮に達しています」と答えをはぐらかします。おまけに戦闘機の機種まで指定して米軍の空爆を求めました。(桜井まり子)
*イブラヒム・ダバシ(Ibrahim Dabbashi)元リビア国連大使。ムアンマル・カダフィによる民主化要求デモの弾圧に抗議して最初に造反したリビア外交官。現在はリビアの暫定国民会議の代表。
字幕:桜井まり子/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗