追悼:マニング・マラブル、その生涯と遺作『マルコムX:創られた人生』

2011/4/4(Mon)
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17分
2011年4月1日、遺作Malcolm X: A Life of Reinvention(『マルコムX:創られた人生』)の発売数日前に亡くなったマニング・マラブル氏の功績と人となりを、学問と活動の分野で後輩にあたる知人2人が回想します。

ジョージタウン大学の社会学者で、Making Malcolm: The Myth and Meaning of Malcolm X(『メイキング・マルコム:マルコムXの神話と意味』)の作者でもあるマイケル・エリック・ダイソンは、子連れのストリートキッズで生活保護を受けながら夜間校に通っていた頃に図書館でマニング教授の本を見つけて触発され、その後、直接の薫陶をうけるようになった体験、そして、学問の成果を社会的弱者の権利拡大の運動にいかし、民主主義の理想を追求し続けた人、マラブルへの尊敬を語ります。

マラブルの友人であり長年、労働・人種問題のアクティビストとして活動しているビル・フレッチャー・ジュニアは、活動に骨身をおしまなかったマラブルの姿を紹介します。また、ダイソンは、マラブルの遺作『マルコムX:創られた人生』について、執筆の意図、内容の特徴などを語り、「マルコムを無批判に崇拝し聖人に仕立てようとする動きを退け、一方でマルコムを悪魔扱いする人格攻撃からも救」い、「アフリカ系米国人文化が生んだ20世紀最大の偉人」という美しく複雑な生身のマルコムの全体像」を与えたと評価します。

自分の足で調査を行い、「神話と二次情報だけに頼っていてはだめ」だと歴史を学ぶ姿勢を学生たちに身をもって示したとされるマラブル教授。アイビーリーグの名門校ではない学校で学び、さまざまな大学で教鞭をとった後、最後はコロンビア大学教授となり、アフリカ系アメリカ研究所を創立するにいたった経歴は、なんだか苦労人そうで、労をいとわぬ努力家で謙遜で温かい人柄というゲスト2人よる描写も、なるほどと思われてきます。(大竹秀子)
*マイケル・エリック・ダイソン(マイケル・エリック・ダイソン):ジョージタウン大学社会学教授。 社会評論の領域で幅広く活動し、エボニー誌から「影響力のある百人のアメリカ黒人」のひとりに選ばれた。邦訳書『カトリーナが洗い流せなかった貧困のアメリカ格差社会』、『プライド―アメリカ社会と黒人』ほか、たくさんの著書がある。

*ビル・フレッチャー(Bill Fletcher):BlackCommentator.comの編集委員兼コラムニスト。進歩的な社会正義、人種平等、経済正義をめざすアフリカ系の人々の組織Black Radical Congress(黒人急進会議)の創立者。
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字幕翻訳:玉川千絵子/校正:大竹秀子
全体監修:中野真紀子/ウェブ作成:中森圭二郎