スティーブン・ヒル『ヨーロッパの約束』

2010/2/12(Fri)
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16分

ギリシャの経済危機がユーロ不安を招いています。EUはギリシャ救済の条件として緊縮財政による赤字の削減を要求しましたが、それに対する国内の猛反発で全国にストが広がっています。こうした中、ニューアメリカ財団のスティーブン・ヒルは、欧州問題への過度の懸念をいましめ、米国はまだまだヨーロッパの社会政策、経済政策に学ぶべき点が多いと言います。

ギリシャ危機が米国の現状と比べ大差のないことは、カリフォルニア州に比較すればよくわかります。米国GDPの14%を占める同州は破産寸前で、返済のために借用書を発行し、ロサンジェルスでは市職員の大量解雇や教育予算の削減でストが起きています。ギリシャの経済規模は欧州全体の2%に過ぎず、ヨーロッパ全体の財政赤字はGDP比6%程度ですが、米国の赤字はGDPの10.5%に達しています。

しかし財政赤字とはいえ、ギリシャ人には国民皆保険制度があり、手厚い失業手当も給付されます。育児や病気休暇は有給です。カリフォルニア州では何百万人もが健康保険に入れず、育児や教育にかかるお金もヨーロッパとはケタ違いです。こうした社会保障の手厚さは、米国では国際競争力のなさにつながると宣伝されていますが、ほんとうでしょうか?ヒルは具体的な例を示しながら、米国人の知らないヨーロッパ流儀の優れた点を紹介します。(中野)

*スティーブン・ヒル(Steven Hill)Europe’s Promise: Why the European Way Is the Best Hope for an Insecure Age(『ヨーロッパの約束  不安の時代に最も期待できるヨーロッパのやり方』)の著者。ニューアメリカ財団で政治改革プログラムを担当する。10 Steps to Repair American Democracy (『アメリカの民主主義を修復する10のステップ』)や Fixing Elections: The Failure of America’s Winner Take All Politics(『選挙不正:勝者総取りの米国政治の失敗』)など、著書多数。

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字幕翻訳:川添峡子/校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子・付天斉