「利益至上主義が新聞を殺した」非営利ジャーナリズムの提案

2009/5/7(Thu)
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ボルチモア・サン紙の元記者で、数々の賞を受賞したHBO局のドラマシリーズ「ザ・ワイヤー」を生み出した人物として有名なデイビッド・サイモンが、米上院の「ジャーナリズムの将来」についての公聴会で証言しました。急速に進むメディアの吸収合併とインターネット台頭の波にのまれる新聞産業の凋落についての見解を述べました。

ネットによる情報配信は民主的であり、無料で情報にアクセスできるのは素晴らしいのですが、ブログの情報には実際の取材によるものはほとんどなく、たいていは他所の情報の寄せ集めです。一次情報を提供するコストを無視すればやがては取材をする者はいなくなり、信頼できる情報がなくなり、最終的には社会全体が損失をこうむります。

しかし米国の新聞の凋落が始まったのは、じつはネットやデジタル技術が台頭するずっと前でした。ウォール街の市場万能主義が新聞業界を企業買収の標的にし、利益優先の合理化断行でジャーナリズムを殺してしまったのです。市場論理では新聞業界を救うことはできません。

これを踏まえて、サイモンは新聞業界の非営利化を提唱します。「住民の信頼を勝ち得て公共のための使命を果たすための方策として、むき出しの資本主義は不向きである」と述べます。(中野)

*デイビッド・サイモン(David Simon) 元ボルディモア・サン紙の記者。HBO局のドラマシリーズ「ザ・ワイヤー」の創出者。

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字幕翻訳・全体監修:中野真紀子