大統領候補者討論会に議論がない理由

2008/10/2(Thu)
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13分

米国大統領選挙のクライマックスは、主要候補者が公開の場で意見を戦わす公開討論会です。その歴史は案外新しく、一般向けに公開放送されるようになったのは1960年のケネディ対ニクソンの対決からです。しかし討論に参加するのはたいていの場合、民主党と共和党の候補だけであり、この2大政党以外の候補が招かれることはまれです。討論会に招かれるのは誰なのか、どんな問題が討論されるのかを決めているのは、いったい誰なのでしょう?大統領候補の公開討論会をモニターする非営利団体「オープンディベート」のジョージ・ファラー氏に話を聞きます。

2008年の大統領選挙では、民主党オバマ陣営と共和党マケイン陣営が密かに談合し、すべての公開討論の内容について自薦に細かな取り決めを行っていたと、ファラーは告発します。候補者討論会を主催しているのは、「大統領選挙討論委員会」という法人です。政府機関のように聞こえますが、じつは1987年に民主党と共和党がつくった民間団体で、非公開の手続きによって2大政党による討論会の独占を可能にしています。委員会の財源は民間企業の献金であり、2大政党への企業献金の隠れ蓑になると同時に、企業に敵対しない両党の提言のみに議論の範囲が限定する役割をはたしているらしいのです。

両党はしばしば献金を受けた企業に配慮しますが、それは国民の大多数の意見とは正反対のものです。「2大政党が取り上げない国民の声を代表するのが第3党の役割です。奴隷制の廃止も婦人参政権も公立学校の設立も失業保険制度も最低賃金制度も、政策を推進したのは2大政党ではなく第3党でした。2大政党が対策を怠るとき、大衆の支持を受けた第3党が台頭し、2大政党に行動を促すか、さもなければ取って代わります。第3党の声を候補者討論会から排除するのは、有権者の権利を侵害するばかりか、有権者の声こそ民主主義の核心だということを否定するものです」とファラーは述べています。(中野)

ジョージ・ファラー(George Farah) 大統領候補による討論会のシステムを改善する目的でワシントンDCに非営利団体「オープンディベート」をつくり、事務局長をつとめている。No Debate: How the Republican and Democratic Parties Secretly Control the Presidential Debates(『議論の不在 大統領候補による討論会を影で操作する共和党と民主党』) の著者

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字幕翻訳:田中泉 
全体監修:中野真紀子・高田絵里