アルゼンチンで初の女性大統領が当選 IMFとネオリベラル政策への明確な拒否

2007/10/30(Tue)
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 ここ数年、中南米では次々と左派政権が誕生しています。共産主義を象徴する色が赤であることにちなみ、それが少し薄まったイメージの現在の左派勢力の勢いは「ピンクの潮流(Pink Tide)」と呼ばれています。今回は、昨年末に見られた「ピンクの潮流」を2つ紹介いたします。」

 2007年10月に、ネストル・キルチネル前大統領の夫人であるクリスティナ・フェルナンデス氏が、大統領に選ばれました。2006年3月年にチリ大統領に就任したミシェル・バチェレ氏に続き、ラテン・アメリカではここ2年足らずの間に2人の女性大統領が誕生したことになります。

 でも、フェルナンデス大統領誕生をめぐる最も大切な意義は、IMF路線より貧困層救済などの社会政策を優先するキルチネル前大統領の路線が、民衆の支持を受けて引き継がれたということでしょう。

 キルチネル政権の経済政策の成功のおかげで、この5年半の経済成長率は年間8.2%、1100万人を貧困から救い、失業率を21.5%から8.5%まで削減したのです。その間の実質賃金の上昇は40%以上でした。

 このような社会政策を実現するためにキルチネル大統領は、2003年9月のIMFドバイ会議において、「国の経済回復が遅れる」という理由で対外債務支払いを拒否。結局IMFが折れるという場面がありました。これはアルゼンチンだけにとどまらず、ワシントン合意に支配されて累積債務に苦しむラテン・アメリカ諸国にとって、「IMFやワシントンに立ち向かう劇的な転換点だった」と、デューク大学のジョスリン・オルコット氏は語っています。

 クリスティナ・フェルナンデス新大統領をめぐっては、「女性」「前大統領の妻」という面が強調されがちですが、彼女自身、夫ネストルが大統領になる前から、国会議員としての実績をもっていました。そんなフェルナンデス新大統領は、激動のラテン・アメリカの中でどのような流れを作っていくのでしょう。注目していきたいものです。(古山)

*ジョセリン・オルコット (Jocelyn Olcott)  デューク大学中南米史教授
*マーク・ワイズブロット(Mark Weisbrot) ワシントンDCの経済政策研究センターの共同代表

Credits: 

翻訳字幕:川上奈緒子
全体監修:古山葉子