「アイスランドに倣えば石油戦争も温暖化もなくなる」オノ・ヨーコ 後編
芸術家、音楽家、平和活動家として活躍するオノ・ヨーコ。「ジョン・レノンの妻」として扱われがちですが、このセグメントでは、ヨーコ自身の魅力を48分間ご覧いただきます。また、12月8日から日本でも公開されているドキュメンタリー映画『アメリカ対ジョン・レノン』についても、ヨーコに語っていただきます。
ジョンの誕生日(10月9日)から命日(12月8日)までのみ空に光を放つ「イマジン・ピース・タワー」。そんなモニュメントを、オノ・ヨーコがアイスランドに作り、10月に除幕式を行いました。
環境がいいときだけ現れて光を放ち、悪くなったら消えてしまう、はかないタワーの構想は、ヨーコが42年前に思いついたもの。当初からジョン・レノンはそのアイディアに魅せられ、「自分の庭にそのタワーを作って欲しい」とお願いすることが、ヨーコを初めて自宅に招くきっかけとなりました。
ヨーコがタワーの建設場所としてアイスランドを選んだのは、アイスランドが環境のために非常に進んだ政策をとっているからです。国の電力の80%を地熱発電でまかなっているために、石油戦争からも超越し、環境にも優しい。また、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を玄武岩などに吹き込んで石灰化し、方解石に変えてしまう研究を、米国コロンビア大学やフランス国立科学センターなどと共に行っている。「世界がアイスランドに倣えば、石油戦争からも抜け出せ、温暖化も解決する。絶対にうまく行くでしょう」とヨーコは言い切ります。
「ずいぶん楽観的ですね」とエイミーに言われたときのヨーコの言葉が印象的です。 「楽観的なわけではありません。生存がかかっている時に、ただ悲観しているだけなんて、そんな贅沢は許されません。自分にできることをみつけて、それをやる方がいいでしょ」
確かに、それはジョンとヨーコの生き方そのものかも知れません。ベトナム戦争に抗議してハネムーン中に「ベッド・イン」を行なったのも、反戦歌として世界が大合唱することになった数々の歌を創出したのも、ジョンとヨーコにとって、「ただ悲観しているかわりに、自分たちのできることをやってみた」ことだったのでしょう。「そんなことで命が救えると思っているのか?」という非難を浴びながらも、自分たちの信念を信じて遂行していったエピソードを、映画のクリップを交えながら、ヨーコの視点から語っていただきます。また、ジョンのあまりの人気と影響力を恐れて、ニクソン政権がジョンを監視し、国外追放を企てた時のことも、映画を中心に紹介します。
「ビートルズはキリストより天才だ」という発言を曲解されてジョンが辛い思いをしている時に、助けを求めるメッセージを受け止めるように出会ったと言うヨーコ。その後もヨーコは、ジョンのインスピレーションの起爆的存在として、一緒に「イカれた」ことをしでかすアーティスト仲間として、また、「そんなこと無駄」なんて思わずに何かをやり続ける同志として、かけがえのないパートナーだったのでしょう。そうしみじみと感じさせてくれるセグメントです。 (古山葉子)
* オノ・ヨーコ (Yoko Ono) アーティスト、平和運動家
翻訳・字幕:福谷麻由、佐藤真喜子
全体監修:古山葉子