ジョージ・シュルツ元米国務長官 VS 環境活動家ポール・エーリック:地球温暖化、世界の紛争、中国、アル・ゴア、環境をめぐって
環境ジャーナリスト協会は、2007年6月に、スタンフォード大学で第17回年次総会を開催しました。その前夜にプレ・イベントとして行われたオーロラ・フォーラム「クリーンで安全かつ有効なエネルギー」の模様をお伝えします。
フォーラムのパネリストには、最近環境に関する発言をしているジョージ・シュルツ元国務長官や、環境学者のポール・エーリック博士などが並び、エイミー・グッドマンが司会を務めました。
シュルツ元長官は、「途上国でも参加できるような具体的な行動を提起しないと、地球温暖化は解決しない。それが京都議定書の失敗だ」と主張。それに対して、「地球温暖化の解決のための交渉の席に着かせるには、中国とエクソンモービル社のどちらが難しいと思うか」とエイミーが切り込みます。石油の消費が増えないと儲からない石油会社は、科学者にお金を払って、温暖化はないという発言をさせたりしてきたからです。
後半のインタビューで、ポール・エーリック博士は、「オーストラリアは優れた太陽熱科学者がいる。キャンベラを完全に太陽発電の街にし、その技術を中国に売ればいい。そうすれば、中国の温室効果ガス排出量の低下にもつながる」と、ユニークで具体的な提案をします。
スタンフォード大学が、エクソンモービル社から巨額の研究費を受け取ることに関して、エーリック博士は、「洗っても洗い切れない汚いお金はある。自分だったらエクソンモービル社からはお金を受け取らない」としながらも、「それでも、石油を最後の一滴まで燃やし尽くすために起こす戦争に資金を使うくらいなら、研究のために使ったほうがまし」とコメント。エイミーも、「温暖化に関して警鐘を鳴らしている科学者が2000人もいるスタンフォード大学に、エクソンモービル社がお金を出すなら、大学が企業に影響を与えるいい機会になるかも」と、敢えてプラスの可能性を指摘します。
最後にエーリック博士とエイミーは、温暖化を深刻に考えるなら、大統領の選挙資金改革が重要だという意見で一致。エクソンモービルのように選挙資金に1億ドル以上拠出する企業がたくさんいる中、それを規制しないと重要な問題の解決が遅れると。「選挙資金問題は、重要な科学的問題です」と締めくくられました。(古山)
• ジョージ・シュルツ(George Shultz)
元米国国務長官。2007年9月5日にオーロラ・フォーラムでの発言を収録
• ポール・エーリック(Paul Ehrlich)
保全生物学研究センター所長。スタンフォード大学にて人口学教授。集団生物学の世界的権威であると同時に、共進化研究の草分けでもある。保全生物学研究センターでは、生物多様性を維持する方策を提唱し、環境保全の専門家に最新の研究状況を教え、さらに、一般市民への啓蒙活動も進めている。
字幕翻訳:川上奈緒子
全体監修:古山葉子