『明日の思い出』 オルタナティブの思想家マイケル・アルバートの回想録

2007/4/17(Tue)
Video No.: 
3
23分

 資本主義に代わるものは何か?-「パレコン」(ParEcon:参加型経済)を提唱する米国の社会活動家、マイケル・アルバートの登場です。今年発表された回顧録にあわせ、ベトナム反戦を契機に目覚めた学生時代と教授だったノーム・チョムスキーとの出会い、共同創刊した言論誌『Zマガジン』やウェブ版『Zネット』などでの活動と理想の模索、「公平性・連帯・多様性・自主決定」の4つを価値観の柱とする「参加型経済」の提言に至るまで、根底に一貫するアルバートの思想と、実践の中でそれに形を与えようと奮闘してきた自らの歴史について語ります。

 アルバートは87年にリディア・サージェントと『Zマガジン』を共同創刊しました。これを母体に90年代半ばに開始したウェブサイト「Znet」は、ノーム・チョムスキーやハワード・ジン、故エドワード・サイード、作家アルンダティ・ロイや環境活動家ヴァンダナ・シヴァなど、米国内外の多くの左派論客やアクティビストたちの洞察に満ちた言論を紹介してきました。

 インタビューの中でアルバートは、「現在の不正に気づきながら『他に選択肢はない』と思い込むことが、社会を変革する運動の最大の障害」と語っています。「参加型経済」は、資本主義の市場競争原理や権力支配、中央指令型システムに起因するさまざまな問題/不正に対する純粋な怒りから、批判するだけでは足りない、資本主義に代わる社会のあり方を、と経済学者でもある彼が同志らと共に提示しているものです。

 ある著書でアルバートは、1999年のWTOシアトル会議以降の運動への警告と喚起として、「例えばグローバライゼーションの不正に抵抗することとは、遠方へ出向き、警備隊とやりあうアクションのことだけだと思い込まれてしまえば、それをできる人間は限られ、多くの人はそこから外れざるをえず、変革に至るまでの力になりきらない。そうした行動をもしのぐほどに、さまざまな人々が、今居る場所で日々持続できるやり方で、自分にとって重要なテーマからさまざまなアクションを自発的に続け、それが互いに連携しながら何百万人にも何千万人にも増えるほうが、社会の真の変革につながる」と述べています。(文:甘糟智子)

★ DVD 2007年度 第2巻 「2007年6-7月」に収録

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~マイケル・アルバート関連のサイト~

● Zコミュニケーションズ(英語)
 (ZマガジンとZネットのサイトへリンク)

● サウス・エンド・プレス(英語)

● PARECON Life after Capitalism (英語)

<論評>
● セルジュ・アリミ「ユートピアを論じ合う国際セミナーにて」(斎藤かぐみ訳) ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2006年8月号

* マイケル・アルバート(Michael Albert) 米国の社会活動家、『Zマガジン』編集者、執筆者。学生活動家としてベトナム反戦に参加、マサチューセッツ工科大学を退学処分となった。77年、出版社「サウス・エンド・プレス」を仲間と共に創設。その後、87年に雑誌『Zマガジン』を創始し、90年代半ばにウェブサイト『Zネット』を開始する。経済思想家として資本主義に代わる経済社会システム「パレコン(PARECON:Participatory Economy、参加型経済)」を提唱。2007年1月、自身の半生の回顧録Remembering Tomorrow: A Memoir(『明日の思い出』)を発表。1947年生まれ、米国ニューヨーク州出身。)

Credits: 

翻訳・字幕:甘糟智子
全体監修:中野真紀子