ディズニーワールドの隣の「食物テロリスト」 エイミー・グッドマン(2011.6.28)
ディズニーワールドの隣の「食物テロリスト」 エイミー・グッドマン(2011.6.28)
「食物テロ」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろう。食料品店の棚に並んだ商品に毒を盛るような邪悪なたくらみ? カリフォルニア州オーランドのバディ・ダイヤ市長ならば、腹を空かせたホームレスに公園で食事を配る集団を思い浮かべるかもしれない。ダイヤ市長が、「爆弾より食べ物」オーランド支部の活動家を「食物テロリスト」呼ばわりしたことは、あちこちで引用された。ディズニーワールドのお膝元のオーランド市で、ここ数週間に21名以上が逮捕された。公園で無料の食事を配ったからだ。
「爆弾より食べ物」は飢えと闘う国際的な市民団体で、その名前が示すように反戦を掲げている。ウェブサイトの紹介によれば、「"爆弾より食べ物"は世界の千以上の都市で、菜食主義メニューの食事を無料で提供しています。それは戦争や貧困や環境破壊に抗議するためです。毎日10億以上の人々が飢えに苦しんでいるというのに、戦争に使うお金がどこにあるのでしょう?」 オーランド支部はイオラ湖公園で毎週月曜日の午前中と水曜日の夕方に炊き出しを行なっている。
最近オーランド警察は炊き出しをする人々を逮捕している。ベンジャミン・マークソンもその一人だ。「彼らのしていることこそテロリズムだ。自分の町の飢えた貧しい人々に食物を分け与え、地域社会に役立とうとする者たちを逮捕するなんて。私たちは公園に来て、お腹を空かせた貧しい人々に食べ物を分けてあげただけだ。どうしてそれがテロリズムになるのか」と困惑する。
シャヤン・エラヒ弁護士も理解できないと言う。「爆弾より食べ物」オーランド支部の法定代理人を努め、市当局を相手取り差し止め訴訟を起こした。裁判を担当するフロリダ州第9巡回裁判所のベルビン・ペリー判事は、今オーランドで進行中のケイシー・アンソニーの殺人事件も担当している。ニュースで見る限り筋の通ったきまじめな判事のようだが、アンソニー裁判がメディアの脚光を浴びる中で、差し止め訴訟にも時間を割けるようエラヒ弁護士は願っている。
問題はオーランド市の「大規模炊き出し」条令だ。25人以上の集団に食事を提供する団体は、たとえ無料提供でも許可が必要だ。許可は一団体につき年2回しか与えられず、「爆弾より食物」オルランド支部は、すでに2回の許可を使いきってしまった。
フロリダ公民権協会は、「爆弾より食物」をテロリストと呼んだことを陳謝せよとダイヤ市長に求めている。断罪されるべきは、一度に25人以上に炊き出しをすることではなく、25人以上が炊き出しを必要としていることだろう。
エラヒ弁護士は、この弾圧をオーランド市のダウンタウン再開発計画と結びつける。「市長はダウンタウン開発評議会を発足させました。彼の目的は、ダウンタウンに相応しくない住民を追い出すことです。でも時代は変わったのです。いまは誰もが苦しんでいる。『爆弾より食物』の炊き出しに集まる人は、ワーキングプアが増えているのです」。
「爆弾より食べ物」が伝えたいメッセージをよく表わすのが、先週(6月21日)の全米市長会議の決議だ。アフガニスタンとイランの戦争を戦略的に可能な限り早く終結させ、国内の切迫した人道的ニーズを満たすために財源を回すよう連邦政府に呼びかけている。
フロリダ州中部は不況の影響がひどく、破産と差し押さえが全米でもっとも多発する地域の一つだ。国連食糧農業機関は、世界的な食物価格の高止まりが年内は続くと警告している。今年になって食物価格が上昇し、2007-08年に世界中の貧困国で暴動が起こった水準に達している。ギリシャでは緊縮政策に反対する大衆抗議行動とゼネストでアテネ市が麻痺している。
イオラ湖公園からそう遠くないディズニーワールドの有名ソングの一つに「小さな世界」というのがある。「みんなそれぞれ助け合う/小さな世界」。ファタジーを現実のものにしよう。食べ物を分け合うのは犯罪ではない (翻訳 中野真紀子)
調査協力:デニス・モイニハン
© 2011 Amy Goodman
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