温室効果ガスは予想を超えた速さで増加中 新政権の対策は? 前編
前半:国連環境パネルの有力メンバーが、温室効果ガス排出は予想を超えた速さで増加中と警告
国連が設置した気候変動に関する政府間パネル(英語略称IPCC)が、世界中で進行する温暖化の実態とそのメカニズム、さらに将来予測を踏えて抜本的対策を要請する報告書を出し、2007年にノーベル平和賞を受賞してから2年が経ちます。
ブッシュ政権の8年間、京都議定書も国際世論も無視して地球温暖化の現実から目を背け続けた米国も、オバマ政権の誕生でようやく排出量を規制する方向へと舵を切りつつあります。
しかし、最近IPCCの第2作業部会共同議長に就任したクリストファー・フィールド教授は、IPCCの従来予測は1990年代の世界各国の排出実態を基に、その時点で設定された与件にもとづいて策定されたものであることを指摘し、2000年以降、全世界規模で温室効果ガスの排出が激増した今となっては、現実的な排出量増加曲線は予測幅の上限を遥かに超えていると警告しています。
また同教授は、温暖化が或る一定の水準に達すると、気温を安定させ炭素を貯蔵する地球のメカニズムが機能しなくなり、その結果、海洋や土壌(特に高緯度地域の永久凍土)が大量の二酸化炭素を成層圏に放出し、温暖化の進行をさらに加速させる悪循環が始まると予測しています。
世界の趨勢に逆らって強制的な削減策を取ることを拒否し、途上国に責任を押し付けようとする議論に拘泥して財界の短期的利益のみを守ろうとする日本政府。それを支える我々有権者にとっても他人事ではありえない話題です。(斉木)
★ DVD 2009年度 第1巻 「環境とエネルギー」に収録
*クリストファー・フィールド(Christopher Field) カーネギー研究所の地球生態学科の設立者。スタンフォード大学の生物学と地球科学の教授。 2008年9月、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第2作業部会の共同議長に就任。
*マリアンヌ・ラベル(Marianne Lavelle) NPO「センター・フォー・パブリック・インテグリティ」(The Center for Public Integrity 行政監督センター)のスタッフライター。「クリーン・コール」(無公害石炭燃焼技術)問題をはじめとするエネルギーや環境に関する報告書が、同センターのウェブサイト(http://www.publicintegrity.org/)に数多く掲載されている(英文のみ)。
字幕翻訳:さかまきさきえ/校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子・付天斉