G20の退潮と国際関係の再編 欧米の一極支配への対抗軸を模索する世界
G20の退潮と国際関係の再編 欧米の一極支配への対抗軸を模索する世界
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世界はいま大再編の時代を迎えている: 経済学者ジャヤティ・ゴーシュがG20・インド・中国などを語る
9月9日から10日にかけて開催されたG20サミットは、アフリカ連合を常任理事国に迎え、初めてインドで開催されました。しかし、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領という二人の重鎮が出席せず、共同宣言はなんとか出されたもののロシアのウクライナ侵攻を非難する文言は盛り込まれませんでした。気候変動への対応も石炭「廃絶」ではなく「漸減」が目標とされ、「超富裕税」への言及もありませんでした。この結果をどう評価すべきか、インド出身の経済学者ジャヤティ・ゴーシュ教授に聞きました。
G20が誕生したのは、肥大化しすぎた国連に代わって、小回りの利く少数の実力のある国々のグループが国際問題を実際的に解決していくという考えからでした。しかし各国の利害調整は難しく、2009年をピークに実効性が衰えていました。今回の議長国インドも自国の地政学的な利害ばかりを考えており、世界全体の問題解決に取り組む姿勢は見られず、共同宣言も中身のないものになったとゴーシュは指摘します。
しかも、今回は中国とロシアの首脳が出席していません。プーチンの欠席は国際刑事裁判所の逮捕状が出ているからでしょうが、習近平はBRICSはじめ他の国際会議には出席しているのですから、欠席はG20サミットは時間の無駄と表明したに等しいものです。
こんな状況ですから、気候変動という今世界が直面する一番緊急な問題に対してなにも有効策が打ち出せていません。とりわけ必要なのは世界80か国もが苦しんでいる債務危機の解消とタックスヘイブンの抑制ですが、それはスルーされてしまいました。アフリカ大陸が初めて高級メンバーに加わったのはよかったのですが、肝心のその組織自体はもはや何の成果もあげていないのです。
G20凋落の一方でBRICS+は勢いを増しており、時代は国際関係の大再編に突き進んでいます。米国主導の一極支配は終わりを迎えるのでしょうが、対抗軸の姿はまだおぼろげです。中国がその中心となるのかどうかもわかりません。二極化というより、多極化に向かうのかもしれません。いずれにせよ、近代史上の大変動期であるのは間違いなさそうです。