33年前の9月18日、米国は自国領土内での核ホロコーストの発生を辛くも回避しました。いわゆる「ダマスカス・アクシデント」です。アーカンソー州ダマスカス郊外のミサイル発射基地で大陸間弾道弾タイタンⅡが事故を起こしたのです。通常の保守点検作業中、若い作業員が重さ4キロの工具をサイロ内で落としてしまいました。それがミサイルの外殻を突き破って可燃性のロケット燃料の大規模漏出を引き起こしました。タイタンⅡの先端部にはかつて米国ミサイルに搭載された中で最強の熱核弾頭が載っていました。広島を破壊した爆弾の600倍の威力があったのです。事故からの次の9時間、空軍のグループは決死の覚悟でミサイルを大規模爆発から救おうと奮闘しました。爆発すれば計り知れない被害が必至でした。その詳細がエリック・シュロッサーの新著Command and Control: Nuclear Weapons, the Damascus Accident, and the Illusion of Safety(『指揮と統制:核兵器、ダマスカス・アクシデント、そして安全幻想』)に書かれています。同書は、米国国内での核爆発事故や、偶発的な戦争勃発まで間一髪の状態になったことが、どのくらい頻繁に起きてきたのかを検証してします。