2009年第1巻(通巻11) 環境とエネルギー

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2009年度第1巻のテーマは、オバマ政権の誕生で米国の政策に方向転換が期待される「環境とエネルギー」

☆付録の対訳小冊子は、エイモリー・ロビンス「原子力は気候変動を悪化させる」です。それぞれの動画の詳細は、画面をクリック

 

2009年度第1巻のテーマは、オバマ政権の誕生で米国の政策に方向転換が期待される「環境とエネルギー」

☆付録の対訳小冊子は、エイモリー・ロビンス「原子力は気候変動を悪化させる」です。それぞれの動画の詳細は、画面をクリック

   
 

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  IPCCの第2作業部会共同議長に就任したクリストファー・フィールド教授は、IPCCの従来予測は1990年代の各国の温暖化ガス排出状況を基に策定されたものであり、世界規模で排出量が激増した今では、現実的な増加曲線はIPCC予測の上限をはるかに超えていると警告しています。公共政策の透明性を確保することが目的のNGOセンター・フォー・パブリック・インテグリティによると、気候変動分野で活動する米国のロビイストの数はここ5年間で4倍に増えました。この中には代替エネルギーや健康・環境政策関連も含まれていますが、大多数は大手製造業やエネルギー業界など気候変動対策に反対する勢力に雇われており、政策を歪める大きな要因となっています。最近は金融大手が気候問題への発言力を拡大し、排出権取引市場用を中心とした産業政策に対策が集中する傾向があります。これは汚職や非効率が蔓延する利権あさりの場となりかねないだけでなく、新規エネルギー開発などを含めた総合的な対策の実効性を損ないかねません。(2009年2月26日放送)

クリストファー・フィールド(Christopher Field) カーネギー研究所の地球生態学科の設立者。スタンフォード大学の生物学と地球科学の教授 マリアンヌ・ラベル(Marianne Lavelle) NPOセンター・フォー・パブリック・インテグリティ(The Center for Public Integrity:行政監視センター)のスタッフライター。


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輸入石油への依存度を減らす方針のオバマ大統領は、振替エネルギーとして原子力の利用も否定していません。ただし、「技術的な難点を克服できれば」という条件が付いています。廃棄物の処理や施設の安全性などの問題は今後数年で克服できるものではないし、膨大な建設コストは政府の助成が頼りです。一方、ポズナンで開かれた国連気候変動枠組条約第14回会議(COP14)は、CO2削減の数値目標も打ち出せず、進展はありませんでした。ただ気候変動の影響をまっ先に受ける小さな島国や途上国が危機を強く訴え、気候変動における南北格差の問題が鮮明になりました。2009年12月にコペンハーゲン開催が予定される次の会議(COP15)に向けて今から行動を起こすことが重要だとゲストは訴えます。(2008年12月16日放送)

アンドリュー・レブキン(Andrew Revkin) ニューヨークタイムズ紙の科学記者 ビル・マッキベン(Bill McKibben) 環境問題専門家、環境保護キャンペーン"350.org"の共同設立者。


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石炭が火力発電の主力である米国では、原子力発電が置き換える燃料は石炭です。従って、輸入石油への依存度を下げるという安全保障上の利点はありませんが、CO2削減には効き目があるように聞こえます。でもロビンスは、原子力の拡大は気候変動対策としても不利だと言います。コストが跳ね上がっているからです。コスト効率が極端に劣るため、他の優れた気候対策を差し置いて原発を拡大するのは相対的にマイナスです。原発のコストは風力発電の3倍と、おそろしく不経済なので、民間企業はたとえ補助金がついても原発への投資には消極的です。そのため原発の能力増は太陽発電よりも少なく、風力の10分の1、マイクロ発電の40分の1でした。この年初めてマイクロ発電が原子力を抜き、世界の発電量の6分の1を占めるようになりました。再生可能エネルギーや省エネはCO2を出さないし、廃熱発電もCO2を出しません。最善の気候対策のためには賢い投資が必要です。(2008年7月16日放送)

エイモリー・ロビンス(Amory Lovins) コロラド州のNPOロッキーマウンテン研究所の代表。1982年に同研究所を共同設立し、世界8カ国の政府、米国の20の州政府にエネルギー政策を提言してきた。


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2008年の大統領選挙では、マケイン候補もオバマ候補も共に米国の環境とエネルギーの問題を解決する万能薬として「クリーンコール」を大いに持ち上げました。石炭は地球温暖化の元凶と目されるCO2を最も多く排出するエネルギー源ですが、その石炭の燃焼によるCO2排出を抑え、環境への影響を少なくする新技術がクリーンコールです。しかし多くの環境団体や科学者たちは、「そもそも石炭の燃焼がクリーンでありうるのか?」と疑問を提起しています。ロサンゼルス・タイムズ紙は、クリーンコールは石炭業界の宣伝文句と切り捨て、地球温暖化と戦うと言いながら石炭利用を推進するだけだと批判しました。(2008年10月7日放送)

マイケル・ブルーン(Michael Brune)熱帯雨林行動ネットワークの事務局長 ジョー・ルーカス(Joe Lucas)クリーンコール技術を推進するため2008年に結成された大手石炭企業の連合体「米国クリーンコール電力連合」の広報部長。


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米国では中東の石油に依存する体質への危機感もあって、自給率上昇を掲げた国内油田の開発に拍車がかかっています。環境保護の観点から海底油田の新規開発を禁じた法律も、議会で真剣な検討がないまま失効しました。オバマ新大統領は「グリーン・ニューディール」を掲げる一方で、海底油田の新規開発にも前向きです。アントニア・ユハスの新著は、石油業界は巨額の資金をもとに世界の政治経済を支配し、環境破壊と戦争を引き起していると批判し、石油という戦略資源を民主的な管理の下に置く必要性を論じています。(2008年10月7日放送)

アントニア・ユハス(Antonia Juhasz)政策研究所(IPS)、オイル・チェンジ・インターナショナル、フォーリン・ポリシー・イン・フォーカスなどのシンクタンクに所属する研究者、政治活動家


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2008年8月、グルジア共和国で分離独立を主張する南オセチア自治州に政府軍が攻撃をしかけ、これをきっかけにロシア軍がグルジアに侵攻し、双方の無差別攻撃により多数の民間人死傷者が出ました。南オセチアとアブアジアの2州が独立を宣言し、これを承認したロシアと国交が樹立すると、グルジアを支援する米国とロシアの間に緊張が高まり、グルジアのNATO加盟に向けた動きが加速しました。報道はエネルギーの問題にほとんど注目していませんが、ロシア=グルジア紛争の本質は、カスピ海から欧州への石油と天然ガスの流れを支配して利益の最大化と欧州への政治的な影響力行使を図るロシア指導部と、パイプライン建設によりロシアの影響を切り崩そうとする米国のて地政学的な抗争なのです。(2008年8月15日放送)

マイケル・クレア(Michael Klare)  マサチューセッツ州アマーストのハンプシャー大学に本部を置く五大学合同プログラム「平和と世界安全保障学」の主任教授。ネイション誌の国防問題アナリストで、『血と石油』はじめ多数の著書がある。


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米国土地管理局は2008年末、ユタ州南部に広がる連邦政府所有の原野における石油ガス採掘権の競争入札を断行しました。この売却には、多くの環境団体が強く反対していました。環境団体が差し止め訴訟などで抵抗する中、ユタ大学で経済学を学ぶティム・デクリストファーが、たった一人で公開入札の妨害をこころみました。彼は入札会場に入り込み、入札に参加することによって多くの区画の値をつり上げ、結果的に2万2000エーカー(約8900ヘクタール)を落札したのです。彼の行動によって入札は中止され、その後の競売は延期されました。(2008年12月22日放送)

ティム・デクリストファー(Tim DeChristopher) 環境活動家、ユタ大学の学生。http://www.bidder70.org/


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