コナー・フォーリー「人道主義は いかに戦争へと向かったか」
紛争が民衆にもたらす暴力や人権侵害を解決する方法として、しばしば「人道的介入」の必要性が語られます。しかし、コソボ自治州(その後2008年に独立を宣言)におけるアルバニア系住民の保護を名目にしたNATOによるセルビア空爆、フセイン政権によるクルド人やシーア派住民への弾圧が導火線の一つとなった英米軍主体のイラク侵略など、実際の例をみると、むしろ紛争を拡大し、民間人の被害の深刻化をもたらす例が目につきます。ゲストは『細い青い線─人道主義戦争への道』(The Thin Blue Line: How Humanitarianism Went to War)の著者コナー・フォーリー氏。数多くの紛争地帯で人道援助活動に携った経験をもとに、人道的介入論の起源と問題点を分析します。
国連での合意を経ることなく、米英を中心とした軍事大国が、介入すべき紛争を恣意的に選択して自国利益追求のために行う最近の「人道的介入」論。その起源は湾岸戦争にあります。そうした介入は、紛争を解決するどころか、NGOなどが行なっている国際救援活動を阻害していると、フォーリー氏は批判します。
フォーリー氏はまた、1989年に英国でピノチェト元チリ大統領が人道に対する罪の嫌疑で逮捕された事案に、アムネスティ・インターナショナルの会員としてかかわった経験も持っています。これに照らして、米国のブッシュ前大統領と高官達がイラク戦争やアフガニスタン戦争に際して行った人道に対する罪に対しても、米国民には彼らを裁きにかける責任があると論じています。(斉木)
コナー・フォーリー(Conor Foley)
英国ノッティンガム大学の人権法律センター研究員で現在ブラジル在住。コソボ・アフガニスタン・ウガンダ北部・コロンビア・スリランカ・インドネシアのアチェ州・ボスニア=ヘルツェゴビナなどで人道支援活動に従事した経験を持つ。国際紛争や人道支援活動に関する話題を中心に、同氏の書いた記事は英国ガーディアン紙のオンライン版「The Thin Blue Line: How Humanitarianism Went to War」(http://www.guardian.co.uk/profile/conorfoley+commentisfree/commentisfree)
で読むことが出来る。
字幕翻訳:玉川千絵子/校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子・付天斉