第24巻 サイバー空間の軍事化

Share it now!

 インターネットはもろ刃の剣。自由な情報の交換で市民が覚醒し民主主義が進展するはずが、現実は全く逆のようです。政府による情報の秘匿がひどくなり国民はどんどん政治決定から遠ざけられる一方、オンラインの個人情報はすべて記録され、過去に遡って瞬時に検索が可能に。悪夢のような究極の全体主義が出現するやもしれません・・・

☆付属の対訳パンフレットは「「ストップSOPA! ネットの自由を守れ」(DVDの中にPDF版も入っています パソコンからご利用ください)。

shot

サイバー活動家アーロン・シュワルツが、2013年1月11日に自殺しました。わずか14歳でRSSの技術基盤をつくった天才プログラマーで、著作物の流通を促すクリエイティブ・コモンズ制度やオンライン百科事典ウィキペディアなどにも協力してきました。公共のものであるべき情報の積極的な開放を進める政治活動にも熱心で、2012年初めに大きな話題となった「オンライン海賊行為防止法」(SOPA)の法案を阻止する市民運動の組織にも大活躍しました。映画産業が推進するSOPA法案は、著作権侵害を防止するために違反サイトを米国内のネットサービスから遮断する権限を業界と政府に与えるもので、著作権侵害を口実にした言論弾圧の道具になりかねない危険な法案だからです。
こうした危惧が当の本人にふりかかったような事件が、JSTORへの不正アクセス容疑による逮捕と訴追でした。学術論文電子アーカイブを他所の大学のイントラネットからダウンロードしたという誰でもやりそうな行為がコンピューター詐欺とされ、有罪になれば35年という厳しい罪状に直面しました。彼の自殺の背景と、変貌しつつあるネット世界についてレッシグ教授が語ります。(2012年1月14日放送)

*ローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)  ハーバード大学法学部教授 クリエイティブ・コモンズのプロジェクトの創始者で理事。


shot

アーロン・シュワルツは、著作権業界が推進するSOPA法案の阻止を目指して、専門家だけでなく広く一般の人々の問題意識を喚起し、反対運動の大きなうねりをつくりました。ネットの力が結集して巨大産業の推進する法案を廃案に追い込むという画期的な運動の顛末について、昨年5月のF2C(Freedom to Connect)全国大会の基調講演でアーロン本人が語ります。
ウィキペディアやグーグルも参加した反対運動で今や悪名高くなったSOPA(下院)/PIPA(上院)法案ですが、この騒動の前段階にCISPAという類似の法案がありました。民主・共和両党のほぼ全議員が支持して成立まちがいなしと見られていたCISPA法案ですが、ほんの数日で野火のように広がったネット署名運動が功を奏して、継続審議に追い込まれたのです。「グーグルのような大企業がSOPA法案を覆したかのように報道されているが、騙されてはいけない。ネット市民の力を過小評価したがるメディアの言葉にのせられて、運動を他人まかせにしてしまえば、次の戦いでは彼らが勝つだろう」とアーロンは警告しています。(2012年1月14日放送)

*アーロン・シュワルツ(Aaron Swartz) 26歳で自殺したサイバー活動家。 2012年5月ワシントンDCで開催されたF2C(接続の自由)全国会議の講演。


shot

国家安全保障局 (NSA)がユタ州の山間の町ブラフデールに巨大な情報監視センターを密かに建設中であることが判明しました。長年NSAの動きを追い続けてきたジェイムズ・バンフォード記者のスクープです。「ステラウィンド」という極秘の監視プログラムの一環で、NSAは米国中に盗聴ポストを設けて国内および国外から発信される膨大な数の電子メールや携帯電話の内容を収集しています。ユタ州に建設される巨大データセンターは10万平米の敷地を持ち、無尽蔵の収容能力を持ちます。一般国民のメールや会話、ネット検索履歴、チケットや乗車券の購入、旅行日程、書籍購買記録などあらゆる個人情報がここに蓄積され、高速ネットワークでつながった全国各地のNSA拠点からアクセスされます。
NSAはCIAと並ぶ米国のインテリジェンス・コミュニティの中核組織ですが、活動は秘密のベールに包まれています。CIA が人間に対する諜報活動を行うのに対し、NSAは通信の傍受や暗号解析が専門です。公式の任務は他国の通信情報の収集分析ですが、どうやら国内の通信も傍受しているようです。米国内で市民の通信を傍受することは捜査令状がない限り違法行為です(2012年3月21日放送)

*ジェイムズ・バンフォード(James Bamford) 1980年代からNSAに関する調査報道を続ける。The Shadow Factory: The Ultra-Secret NSA from 9/11 to the Eavesdropping on Americaなどの著書がある。


shot

国家安全保障局(NSA)の内部告発者、トーマス・ドレイクに話を聞きます。彼はNSAの浪費や不適切な管理、憲法違反の疑いのある活動を報道機関に告発したため、当局の迫害を受けました。スパイ防止法に違反したとして起訴され、最長で35年の投獄という危機に直面しました。でも実際の起訴状にはスパイ行為の具体的な指摘はなく、政府の機密文書を自宅地下室に保管していたという微罪しかありませんでした。結局、この微罪をドレイクが認めるかわりに他の容疑はすべて取り下げるという司法取引が成立し、昨年2011年に裁判は結審しました。当時司法省の首席報道官だったマシュー・ミラーは今ごろになって、「起訴したのは勇み足だった」などと話していますが、明らかに司法を使った内部告発者への嫌がらせです。
オバマ政権は内部告発者に対して米国史上かつてない迫害を加えており、ドレイクをはじめ6人もの元政府職員がスパイ防止法の違反で起訴されています。ドレイクの弁護士で自身も内部告発者であるジェスリン・ラダックは、「これはジャーナリスト弾圧のための地ならしです。政府は公職機密法(Official Secrets Act)を米国にも導入しようと狙っているのです」と言います。公職機密法は英国をはじめとする英語圏の国々で制定されている同様の法律をさし、公務員に政府機密情報の秘匿を義務付けるものですが、政府情報は基本的に開示すべきものという考えの強い米国では、これまで導入は阻止されてきました。しかし9.11を契機に内部告発を封じ込めようとする政府の動きがどんどん強まっているようです。日本の秘密保全法案との関連も気になるところです。(2012年3月26日放送)

*トーマス・ドレイク(Thomas Drake) 国家安全保障局(NSA)の内部告発者。
*ジェスリン・ラダック(Jesselyn Radack)  元法務省倫理顧問。TRAITOR: The Whistleblower and the "American Taliban"(『反逆者 内部告発者とアメリカのタリバン』)の著者


5.新サイバーセキュリティ法案CISPA (18分) -DVD限定

shot

再起不能に追い込まれたSOPA法案に代わる次の脅威として電子フロンティア財団が警鐘を鳴らす新サイバーセキュリティ法案CISPA。国家安全保障法に修正を加えて、ネット企業が大量の顧客データを独自の判断で軍や政府の機関に渡すことを可能にする内容で、個人のプライバシーを大きく侵害し、市民の自由に深刻な影響を及ぼすと人権活動家たちは猛反発しています。2011年末に上程され、翌年4月には下院を通過してしまいましたが、抗議の高まりやオバマ大統領が拒否権の行使を宣言したことにより上院通過は阻止されました。しかし2013年2月に修正法案が再び上程されています。
CISPAはNSAがすでに秘密に進めてきた自国民の監視を合法化し、民間企業の協力を得て堂々と個人情報を集積することを可能にします。ネット上の行動の匿名性を確保するTORプロジェクトを推進するアッペルボームは、WikiLeaksに協力して米当局の監視の標的にされていますが、CISPA法案が成立すればTORのようなプロジェクトが存続する余地もなくなると言います。(2012年4月26日放送)

*ミシェル・リチャードソン(Michelle Richardson) アメリカ自由人権協会の法制担当。
*ジェイコブ・アッペルボーム(Jacob Appelbaum) コンピューター・セキュリティー研究者。WikiLeaks有志、ネットの匿名化を進めるTORプロジェクトを推進。


shot

WikiLeaks創始者ジュリアン・アサンジがロンドンのエクアドル大使館に立てこもって半年が経ちました。エクアドルへの政治亡命が認められたものの、大使館を一歩でも出ればイギリス当局に逮捕されます。長期にわたる監禁生活で健康の悪化も懸念されますが、クリスマスにはバルコニーから挨拶し、ブラッドリー・マニングやジェレミー・ハモンドなど獄中にあるサイバー活動家への注目を喚起し、彼らへの支援を訴えました。その直後にデモクラシー・ナウ!が特別インタビューを行い、最新の状況や新刊の共著Cypherpunks: Freedom and the Future of the Internet(『サイファーパンクス インターネットの自由と未来』)の紹介や最近の状況についてビデオストリームで話を聞きました。
いまやインターネットは人々の生活に深く浸透し、あらゆる社会に融合した結果、ひとつ間違えば人類文明を滅ぼしかねない大きな脅威となったと主張しています。旧来の権力構造に無制限の力を与え、究極の全体主義を実現させる悪夢を防ぐためには、暗号学を用いたネット空間の現実空間からの切り離しが決め手だと、アサンジはネットの未来を語ります。(2012年11月29日放送)

*ジュリアン・アサンジ(Julian Assange) WikiLeaks創始者、サイバー活動家

 
会員/非会員  
 

   銀行振り込みや郵便振替をお使いの場合はこちらへ


Share it now!

 インターネットはもろ刃の剣。自由な情報の交換で市民が覚醒し民主主義が進展するはずが、現実は全く逆のようです。政府による情報の秘匿がひどくなり国民はどんどん政治決定から遠ざけられる一方、オンラインの個人情報はすべて記録され、過去に遡って瞬時に検索が可能に。悪夢のような究極の全体主義が出現するやもしれません・・・

☆付属の対訳パンフレットは「「ストップSOPA! ネットの自由を守れ」(DVDの中にPDF版も入っています パソコンからご利用ください)。