2011年第3巻 アサンジ=ジジェク対談

ジュリアン・アサンジとスラボイ・ジジェクがエイミー・グッドマンの司会で対談! アサンジは保釈されたとはいえ、いまだ軟禁状態におかれています。スウェーデンへの身柄引き渡しに抵抗して英国で裁判闘争中のアサンジが、自らの体験を通じて浮かび上がった欧州同盟や米国における危険な司法の状況について語ります。また情報開示をめざす活動の理念、ウィキリークスを立ち上げた経緯、中東の民主化運動とのつながりなど、興味津々の話題を語ります。120分の長時間対談を丸ごとお届け。

対訳パンフレットも完全訳です。付録にするには量が多すぎるので、PDF版でDVDに焼きこんであります。プリントアウトして、ご利用ください。

ジュリアン・アサンジとスラボイ・ジジェクの対談
  2011年7月2日ロンドン (120分)

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 2010年12月ロンドンの監獄からは保釈されたものの、以来ずっとノーフォークの邸宅に軟禁状態に置かれてきたジュリアン・アサンジが、スウェーデンへの身柄引き渡しに抗告する上訴審を間近に控えた7月2日、初めて公開の場に姿を見せました。スラヴォイ・ジジェクと長時間の対談を行い、司会はエイミー・グッドマンという、たいへんに珍しく興味深いイベントです。主催のフロントライン・クラブは、最前線で命を落とした戦争ジャーナリストを記念して設立された団体です。二時間に及ぶ興味深い対話を丸ごとお送りします。

 ウィキリークスが2010年になって続々と公開したアフガニスタンやイラクでの米軍の戦争犯罪の記録や国務省の外交公電など膨大な数量の歴史資料が国際社会に及ぼした影響とその意義についてです。歴史の記録が主流メディアによってねじ曲げられ、この世界について人々が正しい認識を持つことをできなくしているため、よりよい社会を築いていくための人々の協力を妨げられているとアサンジは言います。

 そうしたウィキリークスの活動に米国政府はヒステリックな反応を示し、関係者に捜査の手が伸びています。ウィキリークスに米軍内部の情報を渡したとされる元米軍上等兵ブラッドリー・マニングは、かれこれ1年も前から軍に身柄を拘束され、厳しい独房監禁が続いている模様です。

 アサンジ自身もいまだにどの国でも起訴されていないのに半年間も軟禁されたままであり、レイプ被害の申し立てを基にスウェーデン当局への身柄引き渡し請求が出ています。起訴もされていないのに外国の裁判所に引き渡されかねないという、EU加盟国間の司法協定の危うさが浮きぼりになります。また米国でも、アサンジの訴追を狙ってワシントン近郊で秘密の大陪審が進められています。こちらも「中世の暗黒裁判」とアサンジが嘆く恣意的な秘密裁判のようで、日本の検察審査会に通じるものがあるようです。

 一方ジジェクは、日常の言説に埋め込まれた言外のほのめかしによって私たちの思考を縛り、それと気づくこともできないほど強力な現代のイデオロギー支配を、ウィキリークスが打ち破ったと絶賛します。アサンジの示唆に富んだ発言を、この時代の思想や風潮との関連でより深く意味づけしつつ、終始わらいをとって会場を沸かせてくれました。

*ジュリアン・アサンジ(Julian Assange) WikiLeaks.org. 編集長。
*スラボイ・ジジェク(Slavoj Žižek) スロベニアの哲学者 精神分析学者 文化理論家。著書多数。新著はLiving in the End Times. (『終末の世を生きる』)