2010年第2巻(通巻16) キリスト教右派

中絶を敵視し公教育から進化論を追放するなど保守的な宗教観が目立つアメリカ。しかし80年代ごろから台頭した急進的なキリスト教右派は、既存の政治制度を通じて政府を乗っ取り民主主義を廃絶しようとする危険な運動です。イラク戦争は神が命じたと本気で考える人たちが権力を握れば・・・

☆付録の対訳小冊子は、「民主主義を侵すキリスト教右派」です。それぞれの動画の詳細は、画面をクリック

 
 
 

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プロテスタントが建国した合衆国は敬虔なクリスチャンが多く、特に福音派が集中する南部はバイブルベルトと呼ばれる保守の牙城です。彼らは伝統的に世俗からは身を引き、政治にはかかわりませんでした。そこに異変を起こしたのが、ドミニオニズム(支配主義)と呼ばれる、新種の運動です。彼らは積極的に政治に介入し、世俗権力を使って勢力を拡大しようとします。組織票を利用して選挙に絶大な力を発揮し、共和党に大きな影響力を持ちます。ヘッジスは、ドミニオニズムは宗教運動としてよりも、ファシズム運動としてとらえるべきだと警告します。(2007年2月19日放送)

*クリス・ヘッジス (Christopher L. Hedges) ニューヨーク・タイムズ紙の特派員として中央アメリカ、中東、バルカンなどに滞在した。現在はネイション研究所の上級研究員。ハーバード大学で神学を学んだ。American Fascists: The Christian Right and the War On America(『アメリカのファシズム キリスト教右派とアメリカをめぐる戦争』)の著者。


2.キリスト教シオニストが最強ロビー結成 (17分) DVDのみ限定編集

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ハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授とシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授の共著『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』は、AIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)のような親イスラエル政治圧力団体がワシントンで大きな力をふるい、米国の外交方針をねじまげて国益を損なっていると論じて大きな話題となりました。しかし、そのAIPACをもしのぐような最強のイスラエル・ロビーが誕生しました。CUFI(イスラエルのためのクリスチャン連合)は、イスラエルの領土拡大を支持するキリスト教徒のシオニストの団体です。
キリスト教シオニストたちは終末論を信じ、この世の終末にイエスが再臨し、真のキリスト信者だけが救われると考えています。すべてのユダヤ人が約束の地に帰還することは、その終末に至るために必要な過程です。この人々にとって、中東で起こる紛争と流血は終末が近づいていることの証しであり、イランとイスラエルの核戦争も、待望のハルマゲドンの始まりです。(2006年8月15日放送)

*マックス・ブルーメンソール(Max Bltenthal)ジャーナリスト。ネイション研究所のフェローで、Republican Gomorrah: Inside the Movement that Shattered the Party(『共和党のゴモラ 党を破壊した運動の内幕』)の著者。


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2008年の選挙で共和党の副大統領候補に選ばれたサラ・ペイリン元アラスカ知事。現在もティーパーティー運動の波に乗って庶民の人気は抜群、2012年の選挙では共和党の有力大統領候補です。その人気を支えるのはキリスト教右派の運動であり、彼女の宗教観が政治決定に影響することが危惧されます。米国のイラク侵攻は神の与えた使命だと述べた講演ビデオが流出し、終末信仰にもとづいて政府の行動もあらかじめ定められた運命と見ているのではないかと疑われています。アラスカの天然ガス・パイプラインの建設は神の意志だと述べたり、ワシラ市長時代には公共図書館で禁書リストをつくってみたりと、さまざまな問題行動があります。(2008年9月9日放送)

*フレデリック・クラークソン(Frederick Clarkson)20年以上にわたり政治と宗教を追い続ける独立ジャーナリスト。
*エスター・カプラン(Esther Kaplan) ネイション研究所の調査報道記者。


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軍事傭兵会社ブラックウォーターが急速に勢力を伸ばした背景にも、急進的キリスト教右派の運動があります。創業者エリック・プリンスの父親エドガー・プリンスは大富豪で、ジョージ・ブッシュ(息子)を大統領にしたバウアーやドブソンの運動に資金を与えました。御曹司のエリックは、まさにキリスト教右派運動のクラウン・プリンスで、海軍の特殊部隊ネイビーシールズで経験をつみ、除隊後に軍事訓練会社ブラックウォーターを設立しました。やがて大統領に当選したブッシュが対テロ戦争を宣言すると、米国の軍事行動にブラックウォーターが大きな役割を果たします。ブッシュ大統領はテロ戦争を「十字軍」と呼び、アフガニスタンとイラクの2つのイスラム国家を占領し、プリンスの軍隊に警備させたのです。(2009年8月5日放送)

*ジェレミー・スケイヒル (Jeremy Scahill) ジョージ・ポーク賞受賞の調査報道記者。Blackwater: The Rise of the World’s Most Powerful Mercenary Army (『ブラックウォーター 世界最強の傭兵軍の勃興』)の著者。


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ムスリム撲滅の使命に燃える狂信者とは異なり、米国のキリスト教右派の中にはもっと実利的で、ずばり「力と支配」を追求する勢力もいるようです。世間には知られない最強のキリスト教原理主義運動といわれるのが、「ファミリー」と呼ばれる政治秘密結社です。有力メンバーには、米国の連邦議員や財界人、軍幹部、また外国の国家元首などが名を連ね、共和党も、民主党もなく、すべての党派に浸透し、「聖書資本主義」と呼ばれる徹底した自由競争を追求します。まさに市場の「見えざる手」への信仰なのです。『ファミリー』の著者ジェフ・シャーレットが、この秘密集団についての驚くべき発見を語ります。 「イエスが説く社会保障とは?イエスが説く公共政策とは? 答えはいつも"神にゆだねよ" つまり民営化です」とシャーレットは言います。最後は「イエスあるのみ」の状態が実現する「キリスト全体主義」です。しかし彼らの考えるイエスは愛を説く人ではなく、権力志向むき出しの独裁者です。彼らの解釈では「新約聖書」は権力の書であり、これを体現するのはヒトラー、スターリン、毛沢東なのです。(2009年8月12日放送)

*ジェフ・シャーレット (Jeff Sharlet)  ニューヨーク大学の宗教メディア研究所客員研究員。著書はThe Family: The Secret Fundamentalism at the Heart of American Power(『"ファミリー" 米国の権力の中枢に忍び込むキリスト教原理主義』)。


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キリスト教右派が大衆的な政治運動に発展したいきさつを、ブルーメンソールが詳しく語ります。特に大きな影響を持った人物として挙げられるのは、神学者ラッシュドゥーニです。憲法を廃止して神の意思で統治すべきだと主張して、米国の福音派に政治目標を与えました。1960年代に公民権運動を目の敵にしていたジェリー・フォルウェルなどに影響を与えたとされます。もう1人の重要人物はフランシス・シェイファーです。1970年代はじめ米国で人工中絶が合法化されたことに危機感を抱き、人種隔離より中絶反対が先だと福音派に呼びかけました。これがフォルウェルの「モラルマジョリティ」設立の引き金となり、やがて福音派が共和党の最大支持基盤になる素地をつくります。シェイファーは大物議員へも中絶反対を働きかけ、「政界への伝道師」とも呼ばれます。中絶医の暗殺も起こるようになりました。(2009年9月4日放送)

*マックス・ブルーメンソール(Max Bltenthal)  前出