2008年第4巻(通巻10) 食の危機

2008年度第4巻のテーマは、グローバル化の進展がもたらした世界各地の食糧危機を途上国と先進国の両方の側から考察します

☆付録の対訳小冊子は、マイケル・ポーランの対談「アメリカ人の危険な食生活」です。 それぞれの動画の詳細は、画面をクリック
 
 
 

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1.飽食と飢餓 (25分)

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  2008年4月頃から食糧価格の急騰で、ハイチやエジプトを始め東南アジアやアフリカの各地で食糧暴動が起こっています。世界銀行の推定では世界の食糧価格は過去3年で8割も上昇し、少なくとも33カ国で社会不安が拡大しています。でも途上国の食糧暴動をテレビで眺める私達の食卓には、栄養豊富な加工食品が並んでいます。時間も手間もいらず、体によい食品のはずなのに、米国では病的な肥満が急増しています。しかも貧しい人々ほど肥満に陥りやすい。8億人が飢える一方で、10億人が肥満という現代世界の矛盾はどこから来るのでしょうか?(2008年4月8日放送)

ラージ・パテル(Raj Patel) 米国カリフォルニア州在住の食糧政策アナリスト。アフリカでの開発支援や、国際的な農民連帯組織ビア・カンペシーナ(Via Campesina=農民の道)への協力活動を行う。現在カリフォルニア大学バークレー校のアフリカ研究センターに籍を置き、Stuffed and Starved: the Hidden Battle for the World Food System(『飽食と飢餓―世界食糧システムの見えざる戦い』)を刊行。


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現在の食糧危機の原因は、食糧の絶対量の不足ではありません。地上にはすべての人を養うだけの食糧があるのに、人間が欠乏をつくりだしているのです。自由市場万能の経済体制が、経済における権力の集中を可能にしています。食物を分かちあう人類の本能を、強者が勝ち残るという市場ルールを唯一のドグマとする経済イデオロギーが打ち負かしてしまった結果です。国際金融機関の自由貿易政策は、援助を与える条件として半強制的に途上国から食糧の自立を奪いました。国際市場で高く売れる作物に転換し、必要な食糧は輸入せよと奨励されたのです。その結果が現在の惨状です。自分の生存に必要なものが他人の支配下にあるような状況では、本当に自由といえるでしょうか?(2008年7月9日放送)

フランシス・ムア・ラッペ(Frances Moore Lappé) 食糧開発政策研究所(フードファースト)、「センター・フォア・リビング・デモクラシー」、スモールプラネット研究所などの共同設立者。共著を含め16冊の著作がある。1971年刊行の『小さな惑星の緑の食卓』は100万部を超えるベストセラー。


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米国の食生活を危機に陥れている元凶は2つ。第一に、自然の食品に付加価値をつけるため、高度な加工処理を行い、食物を工業製品化する食品産業です。思いのままに栄養素を強化し、いつまでも腐らない工業食品がスーパーの棚にあふれ、自然食品は手に入りにくい、ぜいたく品となります。第二に、食品そのものよりも、そこに含まれる栄養素が大事だと唱える「栄養学主義」です。これはイデオロギーであって科学ではない。科学的根拠の乏しい「善玉」「悪玉」のきめつけや、「栄養素」万能の食品評価などによって、食生活を歪ませているとポーランは批判します。(2008年2月13日放送)

マイケル・ポーラン(Michael Pollan) カリフォルニア大学バークレー校の科学環境ジャーナリズム教授。 最新書はIn Defense of Food: An Eater's Manifesto(『食を守れ 食べる人宣言』)。前著The Omnivore's Dilemma: A Natural History of Four Meals(『雑食動物のジレンマ』)は、ニューヨークタイムズ紙ならびにワシントンポスト紙の2006年ベスト10冊に選ばれた。


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水道水は汚く、ボトル水は安全でおいしい。そう信じてボトル水ばかり買って飲んでいる人は多いでしょう。しかし、これは企業が巨額の広告費をかけて消費者に信じ込ませている神話で、実は水道水を精製しただけのボトル水も多く、安全管理基準も、水道水の方が厳しいとケレット氏は言います。 「水の民営化」は、大きな社会問題も引き起こしています。第一に企業が販売用の水を大量に採取するため、水資源が枯渇する地域が出てきていること。インドではコカコーラとペプシが水資源を枯渇させたので、農作物が育たなくなりました。第二の問題は、水の民営化による価格高騰で、貧しい人の生活と命が脅かされること。ボリビアでは、水道サービスの民営化が住民の抗議行動で再び公共のものとなりました。一方、エルサルバドルでは、水道事業の民営化に抗議した13人がテロリストとして起訴されました。(2007年8月1日放送)

ジジ・ケレット(Gigi Kellett) NGOのCorporate Accountability International(略称CAI、「企業の社会的責任を追及する国際組織」)のキャンペーン・ディレクター。現在、「ボトルの外を考えるキャンペーン」を推進中。 マイケル・ブランディング(Michael Blanding) フリーランス・ジャーナリスト。 ウェブサイト Alternet.orgに「ボトル水の嘘」という記事を掲載した。 クリスタ・ハンソン(Krista Hanson)エルサルバドル人民連帯委員会のプログラム・ディレクター


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何百万人もが飢餓に追い込まれる中、一部のアグリ企業は過去最高益をあげています。その筆頭がモンサント社、世界最大の種苗企業です。同社の遺伝子組み換え作物は、米国の食品チェーンにあふれており、次は乳製品を狙っています。乳牛用の人工ホルモンの開発です。 モンサントは遺伝子組み換え種子の特許権を守るため、農家が種子を自家採取して保存することを禁じています。それを徹底させるため大勢の調査員を雇い、農家の栽培記録を開示させ、農場をカメラで監視し、違反の疑いを持てば有無を言わさず訴訟をちらつかせて農民を脅迫しています。このような強引なやり方が気になるのは、化学会社だった同社に毒物汚染の前科があるからです。ウエストバージニア州で製造していた除草剤は、副産物として恐るべき毒性の汚染物質ダイオキシンを発生させました。またアラバマ州では電気機器の絶縁用ポリ塩化ビフェニール(PCB)を生産し、周辺住民の健康を著しく損ないました。(2008年5月6日放送)

ジェームズ・スティール(James Steele) 調査報道記者、ヴァニティ・フェア誌の 寄稿編集者。 Monsanto’s Harvest of Fear(「モンサント社の恐怖の収穫」)を共同で発表した。