DVD 第6巻(2008年2~3月)

1.『マルコムX 自伝』を問い直す / 2.ハイチの受難の歴史 / 3.ブッシュ家の崩壊 / 4.「イスラエルは南アの教訓に学べ」

☆ 第6巻の小冊子は、『マルコムX 自伝』を問い直す の字幕を対訳形式にしたものです

 
 
 

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1.『マルコムX 自伝』を問い直す マニング・マラブル (46分)

Malcom

  ブラック・ムスリム運動の指導者マルコムX は、20世紀アメリカで最も影響力を持った政治活動家の1人でした。無神論者でハーレムのチンピラだったマルコム・リトルは、刑務所で出会った「ネイション・オブ・イスラム」に感銘を受けました。彼は同派に入信してマルコムXと改名し、白人社会への同化ではなく分離独立をめざす、黒人民族主義運動の傑出したリーダーとなりました。当初はキング牧師に代表される非暴力主義の人種差別撤廃運動や公民権運動には批判的でしたが、メッカ巡礼などを契機に世界的な視野を獲得するに至り、1965年2月に凶弾に倒れる直前には汎アフリカ主義に基づく西半球のアフリカ系住民全体の団結と権利拡大を提唱するようになっていました。 このような思想の変化から、彼の人生は常に新たな段階へと進む変転の連続であったとの見方が主流です。そのようなマルコム像を固めたのは、本人がアレックス・ヘイリーと共著で出版した『自伝』です。しかし歴史学者マニング・マラブルは、この見方に異を唱え、従来の研究とは異なるマルコム像を語ります。(2007年5月21日放送)

マニング・マラブル(Manning Marable) コロンビア大学アフリカ系アメリカ人研究所の創始者で所長をつとめる歴史学者。マルコムXの評伝研究の第一人者で、彼の生涯を研究する長期プロジェクトを推進中。2009年には、その成果をまとめた新たな伝記を出版する予定。他にもLiving Black History: How Reimagining the African-American Past Can Remake America's Racial Future(『黒人の歴史を生きる アフリカ系アメリカ人の過去を想像しなおすことは米国の人種問題の未来を変える』)やAutobiography Of Medgar Evers: A Hero's Life and Legacy Revealed Through His Writings, Letters, and Speeches(『メドガー・エバーズの自伝 著作、書簡、演説でみる英雄の生涯と遺産』)など著書多数。


Haiti

民主的に選ばれた大統領が、未明に官邸を襲った他国政府の要員によって拉致され、国外追放される。そんな無法な事件が4年前ハイチで起こりましたが、大手メディアでは報道されていません。カリブ世界の最貧国、政情不安のつづく破綻国家で、またもや軍事クーデターが起こったぐらいで片付けられています。ハイチはフランス革命時代に黒人奴隷が蜂起しフランスから独立した世界最初の黒人共和国です。その輝かしい歴史のために、この国は大きな代償を支払わされてきました。独立以来たえまなく続く欧米の敵意と干渉について、2004年のクーデターの詳細と、その後の現地情勢を調査したランダル・ロビンソンが語ります。 フランスとアメリカの強い干渉は、奴隷制や植民地支配の歴史にかかわる根深いものです。フランスは最大の利益を生む植民地ハイチの独立を認める代わりに、巨額の賠償金を要求しました。その返済のためハイチの国家予算の8割が食われる状態が100年も続いてきました。アメリカの支配層は自分の所有する奴隷たちへの影響を恐れて、特に敵対的でした。ハイチ革命の成功がアメリカ大陸全土の奴隷解放運動を促したからです。中南米全域に広がるアフリカ人奴隷の子孫にとって、ハイチは解放運動の中心地でした。中南米を自分の庭とみなす米国にとっては、ハイチはキューバと並んでめざわりな存在です。そのためハイチは独立以来、欧米の干渉と阻害を受け続け、彼らと結んだ支配者による弾圧と汚職のために世界の極貧国になってしまいました。(2007年7月23日放送)

ランダル・ロビンソン(Randall Robinson) 法律家、活動家。1977年トランスアフリカ・フォーラム(TransAfrica Forum)を創設。カリブや中南米も含めたアフリカ系ディアスポラ社会ならびに米国のアフリカ政策の研究に力をいれ、特に南アフリカのアパルトヘイトに対する反対運動の急先鋒として活躍したことで有名。The Debt: What America Owes to Blacksなどのベストセラーを著し、近著はハイチの歴史を扱った An Unbroken Agony: Haiti, From Revolution to the Kidnapping of a President(『続く試練 ハイチ 革命から大統領拉致まで』)。


Unger

クレイグ・アンガーの新著は、ブッシュ政権の下でネオコン(新保守主義者)たちがキリスト教右派と秘かに同盟し、イラク開戦に向けて好戦的な機運を煽った過程を検証しています。中東紛争はイスラム対西洋の対立軸からとらえられがちですが、アンガーはそれを原理主義という別の視点から見ようとします。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれに原理主義があります。ネオコンも世俗的な衣をまとった原理主義だとアンガーは言います。啓蒙主義を経た近代社会とは相容れないこうした勢力の巻き返しが、現在の事態の大きな背景を描いていると彼は述べます。 ジョージ・Wはブッシュ家の長男ですが、父親に愛されていたのは弟のジェブだったようです。期待されない息子は、次第に父とのあいだに確執を深めていったとアンガーは言います。大統領に就任したジョージ・Wが、父親が信頼していた保守本流の現実主義路線ではなく、過激な原理主義者たちに取り込まれてしまったことも、父親への反発としてとらえられるのかもしれません。親子の対立につけいって、共和党をのっとり行政府の中枢にすわった宗教右派やネオコン勢力が、アメリカを誤った戦争に導いたとアンガーは主張します。(2007年11月16日放送)

クレイグ・アンガー (Craig Unger)調査報道記者、著作家。 『ヴァニティ・フェアー』の寄稿編集者で、『ブッシュの野望 サウジの陰謀―石油・権力・テロリズム』(柏書房)はニューヨークタイムズ書評のベストセラー。新著はThe Fall of the House of Bush: The Untold Story of How a Band of True Believers Seized the Executive Branch, Started the Iraq War, and Still Imperils America's Future(『ブッシュ家の崩壊 強烈な信仰集団がいかにして行政府を掌握し、イラク戦争を開始し、そしていまもなお米国の未来を危険にさらしているのか、その語られざる物語』)


Tutu

南アフリカの反アパルトヘイト運動の精神的指導者だったデズモンド・ツツ元大主教。その後「真実と和解委員会」の委員長として和解プロセスを成功させたことも、世界史に残る大きな実績だったといえるでしょう。「被害の詳細を告発する場は保証しよう。でも復讐に走らず、許しあおう」という方針を貫いたことは、南アが予想されていたような流血の泥沼にはまることなく民主化を遂げることのできた、大きな理由でした。そんなツツ師が、イスラエルとパレスチナの問題に関して発言しました。 「アパルトヘイト体制最後のデクラーク大統領は、宿敵と交渉をするという勇敢な決断を下しました。おかげで、ようやく『安全』を手にしたのです。長い間、暴力で宿敵を抑えつけても決して手に入れることのできなかった『安全』を」と、「宿敵との交渉」を通じた、思い切った和解を呼びかけています。(2007年11月27日放送)

デズモンド・ツツ (Desmond Tutu)南アフリカ聖公会の元ケープタウン大主教。南アフリカでの反アパルトヘイト闘争における主要な精神的指導者。1984年にはノーベル平和賞を受賞。アパルトヘイト撤廃後、アパルトヘイトの加害者と被害者の和解を目指す「真実と和解委員会」が1995年に設置された時、黒人・カラード・白人すべてから信頼の厚かったツツ大主教が委員長を務めた。 現在も世界各国を巡り平和と正義を訴え続けている。