DVD 第3巻(2007年8-9月)

1.チャルマーズ・ジョンソン「米共和国の終焉」/ 2.「ペンタゴン文書」はいかに暴露されたか/ 3.ジョージ・モンビオ「地球温暖化は阻止できる」/ 4.「シッコ」公開に望みマイケル・ムーアが語る

☆第3巻付属の小冊子は、「チャルマーズ・ジョンソン」の字幕を対訳形式にしたものです

 
 
 

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 国際的な人権活動で評価が高い元アメリカ大統領ジミー・カーターは、1978年の中東和平合意をとりもって以来、イスラエル=パレスチナ問題にずっと関心を注いできました。2006年の秋、カーターはイスラエルの占領政策を「アパルトヘイト」という言葉を用いて批判する本を発表し、大きな論争を巻き起こしました。CNNテレビの「ラリー・キング・ライブ」にも出演して、占領の現状を率直に批判するとともに、この問題がいっさい報じられず、議論もされないことが、アメリカの大きな問題だと指摘しました。現実の状況を踏まえた上で、パレスチナ国家を独立させる以外の、別の形の未来を考え始めるときがきているのではないか。ユダヤ人とパレスチナ人が一つの国の中で同等の権利をもって共存する可能性を、「一国家」解決と呼んで追求する人たちが少数ながら出てきています。このトピックスでは、アメリカで発言する二人の代表的なパレスチナ人が、この新しい考え方をめぐって意見を述べます。(2006年11月28日 放送)

チャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson) 日本や中国など東アジアの国際関係を専門とする著名な国際政治学者。カリフォルニア大学サンディエゴ校国際政治学名誉教授。日本政策研究所(米)所長。元CIA顧問。著書に、『アメリカ帝国への報復』、『アメリカ帝国の悲劇』、Nemesis: The Last Days of the American Republic(『ネメシス アメリカ共和国の終焉』 )など。ドキュメンタリー『映画 日本国憲法』(ジャン・ユンカーマン監督)にも出演している。


 ペンタゴン・ペーパーズとは、ベトナム戦争に関するアメリカ政府の政策決定の過程を、第二次大戦直後からたどって分析した、7000ページにわたる国防総省の最高機密文書の俗称です。そこには合衆国政府が、不拡大を約束しながら、実は北ベトナムやラオス爆撃などを行なって故意に戦線を拡大したことを始め、歴代政権が国民を欺いて"泥沼"の戦争に引きずり込んだことが如実に記されています。この最高機密文書の一部が、1971年6月13日に「ニューヨーク・タイムズ」紙にスクープされました。 当時のニクソン政権は出版差止め命令を出しましたが、「ニューヨーク・タイムズ」側は聞き入れず、ついに最高裁が政府の命令を違憲とする判定を下した劇的な展開は有名です。この時、諜報活動取締法や国家反逆罪などをふりかざす政府の脅しにもかかわらず、「ワシントン・ポスト」など他紙も続々と同「文書」の掲載に踏み切り、マスコミが政府に反逆するという前代未聞の事態が起こりました。「世界に類を見ない、公的機関による市民的不服従」とこれを称えるのは、長期の投獄を覚悟で最高機密文書をリークした元国務省職員ダニエル・エルズバーグです。政府の「お尋ね者」となり、地下に潜伏しながら文書の公開に奔走したエルズバーグの行動は、信念に満ちた勇気ある行動が周囲の人々を動かしていくことを示す、感動的な物語です。(2007年7月2日放送)

ダニエル・エルズバーグ(Daniel Ellsberg) 国務省や国防総省に勤務し、ランド研究所アナリストとしてペンタゴン・ペーパーズの執筆チームに参加。ベトナム赴任時代に政府のベトナム政策の間違いを確信していたエルズバーグは、ペンタゴン・ペーパーズを貫くシニシズムと偽善に驚愕し、反逆罪に問われるのを覚悟で内部告発に踏み切った。「ニューヨーク・タイムズ」紙の掲載が始まってからは、友人たちの協力に助けられて地下に潜ったが、2週間後にみずから出頭して裁判を受けた。窃盗、共謀、諜報などの罪に問われたが、ニクソン大統領の「不正行為」(ウォーターゲート事件の一部)のため訴追は却下された。その後は平和活動家として活躍し、予想されるイラク攻撃についても内部告発を奨励している。 マイク・グラベル(Mike Gravel) 元アラスカ州上院議員(1969-81)で、現在は2008年の米国大統領選挙に向けた民主党候補の一人。ベトナム戦争当時、徴兵制の延長にたった一人で反対して意図的な長時間演説による議事進行妨害の戦術をとり、戦後の徴兵制廃止に貢献した。1971年6月エルズバーグからペンタゴン・ペーパーズのコピーを託され、そのうち4100ページを上院小委員会の議事録に残した。これが後にビーコン・プレスから出版された「グラベル上院議員版」で、ノーム・チョムスキーとハワード・ジンによる編集と注釈がついている。


 地球の温暖化の問題は単に年間の平均気温が上昇するだけのことではなく、実際それにより多くの人命が失われるところまできています。潘基文国連事務総長は地球温暖化対策を国際社会が取り組むべき緊急課題だと明言しています。グローバリゼーションや環境問題について多くの著作がある英「ガーディアン」紙のコラムニスト、ジョージ・モンビオ氏は、世界の科学者が主張する基準にそって、2030年までに温室効果ガスの60%削減を実現できれば、まだ地球を救う可能性は残っていると主張しています。そのためには先進国の排出量を90%削減しなければなりません。でも、それを実施するからといって、一部の人たちが心配しているように、自家用車の使用をあきらめたり、産業化社会を放棄する必要はなく、いま人類が到達している技術を駆使することで、十分に健全な地球を取り戻すことができる」というのです。問題は技術ではなくむしろ人間の倫理なのだ、と彼は指摘します。各国政府の政治的な思惑が、技術的には可能な温暖化対策を妨げているのです。地球温暖化の影響を受けにくい温帯にある先進国が温室ガスを大量排出しながら便利な生活を謳歌する一方で、南の貧困国では気候変化が引き起こす洪水や作物収穫量の減少によって人々が死んでいっています。環境問題の救世主のように言われているバイオ燃料でさえ、環境を破壊し、貧困国の人々の食物を奪うという皮肉な結果を招いているのです。モンビオ氏が私たちに呼びかけるのは、賢い消費者になることではなく、地球市民としての自覚を持ち、日々の行動一つ一つが世界にもたらす結果を意識する新しい倫理観を育てることです。(2007年5月18日放送)

ジョージ・モンビオ (George Monbiot) 英「ガーディアン」紙のコラムニスト。環境や政治問題の活動家、環境学者。著書多数。新刊は『地球を冷ませ!——私たちの世界が燃えつきる前に』(日本教文社)。


 マイケル・ムーア監督の新作『シッコ Sicko』が、日本でも公開されました。アメリカの健康保険制度がいかに歪んでいるか、ショッキングな実例が次々と出てくるこの映画。マイケル・ムーアは、アメリカでの映画公開を前に、そんな健康保険制度を変えるよう、ずいぶんと東奔西走しました。このセグメントでは、カリフォルニア看護師協会とカリフォルニア州議会で、マイケル・ムーアが行なった演説を紹介しています。アメリカには国民皆保険制度がなく、健康保険は民間企業が握っていますが、保険会社が事前に承認しないと、治療が始まらない仕組みになっています。利益を追求するためにわざと承認を拒否する保険会社たち。しかも、いったん承認した後でも、どうにかしてその治療費を患者に負担させようとすることも...世界一豊かな国のはずなのに、医療の水準は世界37位。こんな社会になってしまった根本原因は?健康保険問題を入り口に、アメリカ社会の病理の深い原因まで探ろうとするマイケル・ムーア。映画をより深く観るためのヒントが、彼の力説から伝わってきます。(2007年6月14日放送)

マイケル・ムーア (Michael Moore)ドキュメンタリー映画作家で著作も多い。アメリカの銃社会の抱える問題点をえぐった『ボウリング・フォア・コロンバイン』(2002年)でカンヌ映画祭の特別賞やアカデミー賞(長編ドキュメンタリー部門)を受賞した。2004年には米国同時多発テロ以降のアメリカ社会とブッシュ政権を批判した『華氏911』(2004年)を発表し、カンヌ映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞した。グローバリゼーションや大企業中心の米社会の構造に対し、皮肉とユーモアに満ちた鋭い批判が身上。